最新記事

石油

急騰したガソリン価格は来年下がる? 鍵となるのはOPECプラスと米シェール業界

2021年11月19日(金)11時59分

IEAは、来年第2・四半期に米国の原油・天然ガス液(NGL)の生産が48万バレル増えて年間の増加幅は110万バレルになると見込む。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)の試算では、来年第2・四半期の原油・NGL増産幅は22万バレルとより低めだが、年後半に生産が加速するので年間の増加幅は125万バレルとなっている。

もっとも米シェール業界は、過去の原油価格の高騰局面ほど増産に前向きにはなっていない。投資家と株主からは以前よりも適切な資本配分の要求がずっと厳しくなり、生産能力増強投資をする企業は罰せられ、配当支払いや債務削減に注力する企業を高く評価している。

ゴールドマン・サックスのコモディティー調査グローバル責任者ジェフリー・カリー氏は、ロイター・コモディティー・トレーディング・サミットで「北海ブレント価格が83ドルで推移していながら、掘削リグの数は大幅に増加していない」と指摘した。

またシェール企業は人手や機械の不足に苦しんでいるほか、業界がパンデミックによる景気後退からようやく持ち直したとはいえ、増産に動くにはまだ需要動向に不確定要素が多すぎるとの声も聞かれる。

コンチネンタル・リソーシズのベリーCEOは最近の決算発表の電話会議で「不安定な供給超過市場になってもおかしくないところで、あえて過剰に生産することが、業界のどの関係者にとっても適切とは思わない」と語った。

先進国の低在庫がリスク

幾つかのOPEC非加盟産油国は増産に動いている。新興産油国の1つ、ガイアナは、エクソンモービルが運営する洋上設備で来年初めに生産能力を日量22万バレル拡大する方針。ブラジル国営石油会社ペトロブラスは、8月に生産を開始したサントス海盆の深海油田「セピア」で18万バレル生産を増やそうとしている。

ウッド・マッケンジーのバイスプレジデント、アン・ルイーズ・ヒトル氏は、カナダの原油供給も来年第1・四半期に約10万バレル増加する可能性があると述べた。ただ、同国の石油企業の生産姿勢も米国やOPEC同様に抑制的だと付け加えた。

ヒトル氏によると、来年第1・四半期に世界全体の原油供給は日量9980万バレルとなり、想定される需要の9890万バレルより多くなる。

それでもFGEは、先進国の在庫が6年ぶりの低水準にとどまっている以上、市場の需給バランスが早急に変化しないかもしれないとくぎを刺す。「原油価格は恐らく、先月のピークから下落傾向をたどる。しかし現在の在庫の低さにより、今後数カ月中は価格が上振れるリスクがくすぶり続ける」という。

(Stephanie Kelly記者、Noah Browning記者、Sabrina Valle 記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・クジラは森林並みに大量の炭素を「除去」していた──米調査
・気候変動による世界初の飢饉が発生か 4年間降雨なく、昆虫で飢えをしのぎ...マダガスカル
・地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽光の反射が低下


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止 働き手不

ワールド

米連邦最高裁、中立でないとの回答58%=ロイター/

ワールド

イスラエル・イラン攻撃応酬で原油高騰、身構える投資

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中