最新記事

金融

FRB、11月に量的緩和縮小開始 資産購入月額150億ドル減

2021年11月4日(木)08時43分
米連邦準備理事会(FRB)

米連邦準備理事会(FRB)は2─3日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始し、2022年に完了させると決定した。2020年5月撮影(2021年 ロイター/Kevin Lamarque)

米連邦準備理事会(FRB)は2─3日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始し、2022年に完了させると決定した。新型コロナウイルス感染拡大を受け20年3月に導入した危機対応策の解消を急ぐ。同時にインフレ高進は「一過性」のものとの判断を維持し、速いペースでの利上げは必要ない公算が大きいとの考えを示した。

FRBは、経済に「一段の著しい進展」が見られたことを受け、資産買い入れの縮小に着手すると表明。11月に国債の買い入れを月額100億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を50億ドル縮小すると決定した。

物価情勢については、供給網の問題がインフレリスクの高まりにつながっているとの認識を表明。こうした要素は「一過性」のものである公算が大きいとしながらも、インフレ率が予想通りに低下するにはこうした要素が後退する必要があるとした。

パウエルFRB議長は記者会見で「パンデミック(世界的大流行)が収束するに従い、供給網の混乱は解消し、雇用の伸びも上向く」と指摘。「こうした動きに伴い、インフレ率も現在の高水準から低下していく」と述べた。ただ「そのタイミングの不確実性は高い」とした。

労働市場の状況については、来年半ばには十分な改善が見られ、「最大雇用」が達成されたと見なせる可能性があると指摘。また、FRB当局者は「賃金・物価スパイラル」のリスクを高めるような「問題のある」賃金上昇はみられていないと認識していると述べた。

このほか、新型コロナ感染拡大で労働市場が受けた影響を完全に理解するには時間がかかるとも指摘。新型コロナのデルタ変異株の拡散で夏の間に感染が拡大したことで労働市場の回復が阻害されたことや、新型コロナへの懸念から労働市場に復帰していない人がいることに言及し、雇用と労働参加の完全な回復がどの程度の期間にわたり阻害されるか判断するには時間がかかるとの考えを示した。

FRBはフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0─0.25%に据え置くことを決定。「経済活動と雇用の指標は引き続き力強さを増した」とし、インフレ率が2%になり、ある程度の期間にわたり緩やかに2%を超える軌道に乗るまで政策金利をゼロ%近辺に維持するとの姿勢を崩さず、合計150億ドルの買い入れ縮小を決定しながらも、利上げによる政策正常化に向けた次の措置については手掛かりを与えなかった。

FRBはニューヨーク連銀に対し、11月半ばに買い入れの縮小を開始するよう指示。ただ具体的な指示は11月と12月のみにとどめた。

ニューヨーク連銀は11月半ば以降、月額の買い入れを国債を700億ドル、MBSを350億ドルとする。12月半ばには国債を600億ドル、MBSを300億ドルとする。

FRBは「こうしたペースでの毎月の縮小は適切となる公算が大きい」としながらも、「景気見通しの変化に応じて買い入れペースを調整していく用意がある」とした。

パウエル議長は、経済が予想通りに展開すればテーパリングは来年の年央には完了する可能性があると表明。ただ、経済情勢次第で縮小ペースを速めることも遅くすることもできるとし、柔軟に対応する姿勢を示した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中