最新記事

オフィス

急速に進むリアルオフィスへの回帰...企業に求められる「働く場」改革とは

2021年10月29日(金)11時00分
西山亨
マスク姿のビジネスパーソン

Halfpoint-iStock

<国内外でオフィスへの「回帰」が始まっているが、重要なのはコミュニケーションが生まれる空間として正しく機能するかどうかだ。現在のリアルオフィスが抱える課題を解決する可能性を持った「新技術」に注目が集まっている>

東京都が従業員30人以上の都内企業を対象に行っている「テレワーク実施率調査」において、9月のテレワーク実施率は63.9%だったことが発表された。従業員300人以上の企業に限定すると、実施率は90%に上る。

日本企業にもすっかり定着したと言えるテレワークだが、今後も現在の高い実施率がそのまま続くとは限らない。総合商社の双日は、7月から週半分の出社を義務化。丸紅も10月中には週1日の出社を促す体制へ切り替える予定だという。

こうした動きは一足先にアメリカでも現れている。JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなどの金融機関は、オフィスへの回帰を表明。テック業界も同様で、ネットフリックスの会長兼CEOのリード・ヘイスティングス氏は、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューでテレワークについて否定的な見解を述べている。

いずれの企業でも問題視されているのは、テレワークでは従業員同士がコミュニケーションを取る機会が減り、アイデアやイノベーションが生まれにくい環境に陥っていることだ。従来のオフィスでは雑談や気軽な打ち合わせがそのような場として機能することが多く、だれもが発言しやすいリラックスした環境を提供できるのは、オフィスならではの特徴だろう。

オフィス空間における3つの課題

今後、ビジネスパーソンの働き方として一定の割合でテレワークが定着するとしても、一方ではオフィスへの回帰も避けられそうにない。ではニューノーマル時代の「働く場」として、人が増えたオフィスで従業員たちが安心して働くためには、どんな課題を解決していかなければならないのだろうか。

第1に考えられるのは、フロア内で局所的な「密」が発生したときの対処法。厚生労働省が推奨する換気量は一人あたり30m3/hとなっているが、これは空間内で人が均一に分散している場合を想定しているため、密が発生してしまうと推奨される換気量だけでは対応できない。

第2の課題は、打ち合わせスペースなどでコミュニケーションを図る際に、相手との間に2mの距離を取る必要があること。結果、声が聞き取りにくかったり、資料を共有しづらかったりと、円滑なコミュニケーションに支障をきたしてしまう。

第3は会社側の課題となるが、2mの距離を確保した場合、従業員1人あたり4m2のスペースが必要になる。これではオフィスの空間効率を低減させてしまう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

インドに25%関税、ロ製兵器購入にペナルティも 8

ビジネス

米四半期定例入札、8─10月発行額1250億ドル=

ワールド

ロシア、米制裁の効果疑問視 「一定の免疫できている

ビジネス

米GDP、第2四半期3%増とプラス回復 国内需要は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中