最新記事

ビットコイン

ビットコイン過去最高値、オンチェーン分析で見えた長期保有者の動向

2021年10月25日(月)12時51分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)
ビットコインチャート

peshkov -iStock

<ブロックチェーン上の取引データを分析する「オンチェーン分析」からは、「供給ショック」が継続していることと「利益確定」の兆候がないことが分かる>

9月末からのビットコイン(BTC)上昇の背景には何があるのでしょうか?

クラーケン・インテリジェンスのオンチェーン分析によりますと、長期保有者の全体に占める割合が増えることで「供給ショック」を起こしたことが、上昇圧力となりました。そして、ビットコインが6万ドルを突破し一時最高値を更新した今も、長期保有者が利益確定の売りをする兆候はみられせん。

オンチェーン分析とは、ブロックチェーン上の取引データを分析してトレードに活かす仮想通貨ならではの手法です。今回は、「1年で復活した供給量」、「ホドルウェーブ」、「マイナーの保有動向」、そして「クジラの保有動向」についてみてみましょう。

「1年で復活した供給量」1-Year Revived Supply

ビットコインの「1年で復活した供給量」は、長期保有者と短期保有者の動向を詳細に見る上で便利です。この指標は、少なくとも1年間の休眠状態後に動き出したコインの供給量を表しています。「1年で復活した供給量」の増加は、長期保有者によるビットコイン売りが増えたことを示します。

211023kr_ocrk02.png

(出典:Kraken Intelligence, Coin Metrics「1年で復活した供給量(7日間移動平均、赤)とビットコイン価格(紺)」)

現在の「1年で復活した供給量」を見てみますと、長期保有者が未だに売りに走らずに蓄積モードであることが分かります。2020年第4四半期や2021年第1四半期と比べて、少なくとも1年間の休眠期間を経てマーケットに戻ってきたビットコインの供給量は限定的です。

執筆時点で、ビットコインの「1年で復活した供給量」は、2,293.5BTC(約1億4270万ドル)。4万8000ドル付近で推移していた8月以降で最低の水準です。

ビットコイン価格上昇が続く中、未だに「供給量不足」の状態が続いていることが伺えます。

「ホドルウェーブ」HODL Waves

ビットコインの「ホドルウェーブ」は、ある一定期間で動かなかったビットコイン供給量の全体に占める割合です。HODLは、長期保有者を意味し、日本では「ガチホ」と呼ばれています。

ブロックチェーン分析企業Glassnodeのデータを基に、クラーケン・インテリジェンスが以下のようにコインの種類を分類しました。

古代のコイン・失われたコイン(5年以上):5年以上移動がなかったコインです。ほとんどの場合、失われたコインと考えられます。ビットコインの長期的な価値を重視する保有者が増えていることから、今後「昔のコイン・失われたコイン」の割合が増える可能性がありますが、5年以上全く動かさないケースは極めてまれです。

古いコイン(6ヵ月〜5年):6ヵ月から5年間移動がなかったコインで、長期保有者と考えられます。長期保有者は、弱気相場で蓄積し、強気相場が頂点に到達したと考える時に売る傾向がみられます。

若いコイン(0〜6ヵ月):移動なしの期間が6ヵ月未満のコインです。トレーダーやビットコインを支払い手段として使う短期保有者が多いと考えられます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、第3四半期は黒字回復 訴訟引当金戻し入れ

ビジネス

JDI、中国安徽省の工場立ち上げで最終契約に至らず

ビジネス

ボルボ・カーズの第3四半期、利益予想上回る 通年見

ビジネス

午後3時のドルは152円前半、「トランプトレード」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと
  • 4
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 5
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「ハリスがバイデンにクーデター」「ライオンのトレ…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中