最新記事

会議

なぜ議論を「グラフィック化」すると、ヒラメキ溢れる会議になるのか?

2021年9月8日(水)06時25分
flier編集部

グラフィックファシリテーションによるもう1つの効果は、ユーモアを伴った絵があると場が和みやすいという点です。ワシントン大学の心理学教授ジョン・ゴットマンは、世界各国の約3万組のカップルの調査を通じて、将来離婚するカップルと添い遂げるカップルを5分で見極める方法を見出したといいます。その指標の1つが「ユーモアがあるかどうか」。それほどユーモアが大事なのはコミュニケーション全般にいえること。会議で食い違いや対立が生じているときに、ファシリテーターが誰も発言しない様子をあえて描いてみる。ユーモアを交えながら「(外からは)こんな風にみえていますよ」と。それが場の緊張をほぐすきっかけになります。

まずはファシリテーターが率先して自己開示する。何を話しても大丈夫な「安心安全の場」であることを、身をもって表すことがポイントです。

210904fl_ny03.jpg

『グラフィックファシリテーションの教科書』より @natsukoyamada

「不確かさの壁打ち」を楽しむ

── ご著書には「参加者本人も無自覚な領域をグラフィックに描き出すことで気づきをもたらし、共有し合えるようにする」とありました。声のトーンや雰囲気から、内に秘めた想い、暗黙知などを感じ取るために、山田さんはどんなことを意識していますか。

相手が話している内容をいったん脇において、相手の人柄や雰囲気を知ろうとすることでしょうか。「〇〇さんって、このエピソードを語るときはとても楽しそうですね」とか。「いま悲しそうな声に聞こえるのだけどどう?」とか。

大事なのは、相手に仮説をぶつけてみてフィードバックをもらうことです。すり合わせをするから仮説の精度が上がるし、心の機微をとらえるための語彙も豊かになっていく。ここで「いや、それは少し違うんだよね」といったフィードバックをたくさんもらっておくと、ファシリテーションをするときに役立ちます。実際にみんなの前で絵を描くとなると、「この場の様子を一発で正しく読み取らなくては」とプレッシャーを感じますから。

私自身の経験を振り返ると、クリエイター養成学校のスクールディレクターとして、多様な個性をもつ学生たちと向き合ってきた経験が糧になっている気がします。感情を表に出さない学生だと、感情を汲み取るのに苦労することもしばしば。

「きっとこうではないか」と考え、相手のフィードバックを受け取って検証し、また提案するというプロセスで、感じ取る力が鍛えられていきます。

210904fl_ny04.jpg

『グラフィックファシリテーションの教科書』より @natsukoyamada

── なるほど、仮説でいいから相手に尋ねてみる姿勢が大事なのですね。

そうなんです。「不確かでもいいから声にしてみる」というのは、参加者にとっても大事な姿勢です。最近は企業からビジョン策定会議におけるファシリテーションの依頼が多いのですが、「ビジョンが鮮明になってからみんなに共有しよう」という参加者によく出くわします。でもそれではいつまでたっても声に出せないまま。小出しにして相手に伝えてはじめてクリアになっていく。そんな「不確かさの壁打ち」を楽しむことで、参加者同士のすり合わせが進み、ビジョンの輪郭が浮かび上がってきます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス再保険、データセンター向け保険の需要とリスク

ワールド

ノルウェー、防衛費増額を発表 2035年にGDPの

ワールド

NZ財務相、大幅なインフレ加速警告 イラン戦争長期

ワールド

豪、燃料税を3カ月半減 イラン戦争で価格急騰 家計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中