最新記事

経営

ワクチン休暇は有給か、無給か? 中小企業が導入する場合は...

2021年8月3日(火)11時30分
加藤知美 ※経営ノウハウの泉より転載

また、就業規則がない会社の場合は、この機に作成や届け出も検討する必要があるでしょう。法律の専門家に相談しながらの対応が効率良く制度導入に踏み切ることができる可能性もありますので、検討する方法も有効です。

実際に導入する際の手順と注意点

実際にワクチン休暇を導入する場合、主に次のような手順で行うと良いでしょう。

(1)ワクチン休暇日の扱い

ワクチン休暇日の扱いとして考えられる方法は、主に以下の3種類に分類されます。企業にとって最適な対応策を検討しましょう。

・特別休暇とする

特別休暇を有給とするか無給とするかについては前述の通り企業の自由ですが、スムーズに社内のワクチン接種者を増やしていくためには、無給で設定すると社員の反発をかう可能性があります。有給で対応する方法を取ることで、無用なトラブルを防ぐ効果があるでしょう。

・有給休暇とする

有給休暇は法律で義務づけられている休暇ですが、本来の目的は社員がリフレッシュをすることで、また新たな気持ちで仕事に向かうことができるように取得してもらう休暇です。

ワクチン接種は社員の健康や安全を考えた対応であるとはいえるものの、本来ならば自由に取得できるはずの有給休暇の一部をワクチン接種に充てると決める際には、社員を納得させるだけの理由が求められるケースもみられます。有給休暇を活用する場合は、入念に制度導入までの準備を行う必要があることが予想されます。

・無給休暇とする

無給休暇とする場合、その日は欠勤日となり、当然ながら給与額の控除対象となります。有給休暇の設定時以上に社員からの反響があると思われますので、トラブルを防ぐためには別途手当を支給するなど、社員が働き続けるにあたり不利益をこうむらない方法を検討する必要があります。

(2)申請の流れを決める

ワクチン休暇日の扱いが定まったところで、次は申請手続きの内容を決定します。どの社員がいつ休暇日を取得したのかが判断できるよう、事前にワクチン休暇取得の申請書を提出してもらう方法が良いでしょう。

気をつける点としては、ワクチン接種は現時点(2021年6月)では国民の義務ではないため、接種の強要や本当に接種したかどうかが判断できる証明書類の提出を求める方法は避けた方が良いでしょう。強要することで社員が不満を抱き、無用なもめごとへとつながる危険性があるためです。


ワクチン接種済みの人数は、地域によって差はあれども徐々に増加しています。今後も定期的に接種が必要となる可能性に備え、社員の身を守るため、またワクチン接種に関する社員の意識を高めるためにも、会社に合った方法でワクチン休暇を導入する方法が有効となるでしょう。

【参考】
報道資料(2021年6月7日) - 東京都産業労働局

2021.06.22

[執筆者]
加藤知美
エスプリーメ社労士事務所 社会保険労務士
愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に個人事務所を設立。総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。現在は文章能力を活かしたオリジナルの就業規則・広報誌作成事業の2本柱を掲げ、専門知識を分かりやすく伝えることをモットーに企業の支援に取り組んでいる。


※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です

keieiknowhow_logo200.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中