最新記事

不動産

ウッドショックの激震、住宅木材価格は「平時の4倍」──中小工務店、ハウスメーカーは苦境 購入者への影響は?

2021年6月25日(金)17時10分
森 創一郎(東洋経済記者) *東洋経済オンラインからの転載
ウッドショック

ウッドショックがハウスメーカーや中小工務店を直撃している(編集部撮影)

需給の逼迫によって木材価格が平時の数倍に急騰する「ウッドショック」。アメリカで2020年夏ごろからささやかれ始め、日本では2021年3月ごろから表面化した。

「住宅を建築する木材が足りないため、5月ごろから『普段つきあいのない大手メーカーから(柱や梁の継手、仕口の加工を行った)プレカット材の発注が入っている』との話題が業界内で出始めた。ハウスメーカーなどは手当たり次第に発注をかけ、木材取引価格は加工業者の言い値になっている」

国内にあるプレカットメーカー関係者が明かすように、大量の木材を使うハウスメーカーや中小工務店が危機感を募らせている。

木材市場では過去最高値で取り引き

世界的な指標となるシカゴの木材先物市場では5月10日、一時過去最高値の1000ボードフィートあたり1700ドル(18万3600円)を超え、2020年の4倍超となった。IG証券の山口肇リード・ファイナンシャル・ライターは、「年内に需給が緩和する可能性はあるが、しばらくは1200~1500ドルの水準が続く」とみる。

ウッドショックの背景には、住宅ローン金利の低下やテレワークの浸透により、アメリカの住宅需要が拡大したことがある。コンテナ不足や貨物船の減便も重なり、木材の供給網が停滞を余儀なくされたことも需給逼迫に拍車をかけた。

日本では近年、輸入材の増加とともに国産材の供給量が減ってきていた。ウッドショックを受けて国産材を増産しようにもそう簡単にできるわけではない。

日本木材総合情報センターによれば、「梁の材料に使う木材の輸入量は1~4月に前年同期比23%減少して底を打ち、足元では輸入量は増えてきている」(分析担当者)という。ただ、絶対量は圧倒的に不足しており、国土交通省が行った国内の主要建設資材需給・価格動向調査(5月1~5日に実施)によると、木材(製材)の需給状況は「やや逼迫」と判定されている。

地場の中小工務店は苦境に

ウッドショックにより、とくに苦境に陥っているのは地場の中小工務店だ。地場の工務店は国内の戸建て着工数の7~8割を担っている。全国の工務店を会員とする全国工務店協会の坂口岳統括部長は「実際に影響が目立つようになってきたのは今年の3月~4月から。全国的に需給が非常にタイトになった」と語る。

まず、輸入木材が木材加工業者の手元に入荷しない。限られた供給量の中で経営を成り立たせるには、顔なじみの中小工務店より高い値段でも購入してくれる大手メーカーへの出荷を優先せざるをえない。この状況は現在も続いており、中小工務店は資材調達がままならず、追い詰められている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中