最新記事

不動産

ウッドショックの激震、住宅木材価格は「平時の4倍」──中小工務店、ハウスメーカーは苦境 購入者への影響は?

2021年6月25日(金)17時10分
森 創一郎(東洋経済記者) *東洋経済オンラインからの転載

「ウッドショックの影響で請け負った住宅建築価格の見積もりも、引き渡しのメドも立たず、そもそも工事の契約ができていない。工事にたどり着いても1平方メートルあたり最低でも1万円程度のコスト増をかぶっている工務店もある。そのような工務店はコロナ禍で借り入れもかさみ、新たな借金も難しい」(坂口統括部長)。深刻な状況が長引けば、数多くの中小工務店が資金繰りに窮するケースも出てきそうだ。

大手ハウスメーカーも6月に入って動き始めた。大手メーカーの多くはこれまで、木材の発注を3カ月ごとにまとめて行っていた。ところが、「確実に確保できていると断言できるのは8月仕入れ分まで」(大手ハウスメーカー幹部)で、6月に発注する予定の9~11月分の仕入れは様相が変わってきている。

toyokeizai210625_woodshock2.jpg

鉄骨系が多い大手ハウスメーカーは「影響は限定的」と口をそろえる(記者撮影)

各社は表向き、「調達には問題ない」と口をそろえ、最大手の大和ハウス工業は「木材の使用量が多い『xevo GranWood(ジーヴォグランウッド)』の一部で、6月見積物件からやむを得ず価格改定をしているが、それ以外はいまのところ影響はない」(広報)。

積水ハウスも木造住宅「シャーウッド」の値上げに乗り出している。「調達について現場では厳しい交渉もあると聞くが、普段から仕入れ先との関係を築いていること、仕入れルートを広げていることもあり、問題は今のところ出ていない」(広報)と言う。両社はそもそも鉄骨系の住宅がメインで木材を使った住宅は少なく、影響は限定的という。

一方、木造住宅がほぼ100%の住友林業では4月の決算発表回でも緊迫感が漂っていた。説明会では「足元の木材価格は期初想定を上回る価格まで上昇しており、今後の懸念材料。(木材価格の上昇分は)価格改定で対応する」などとした。

ただ、「木材製品の仕入れ先との長年の取引で信頼関係があり、一定量を安定的に購買している。主要な木材製品の調達については当面メドがついている」(広報)とする。

住宅ブームは落ち着くのか

同じく木材の使用量が多い分譲戸建てを主力とするビルダーのうち、北関東を地盤とするケイアイスター不動産は12月末までの住宅販売計画分の木材確保は完了しているとしたうえで、「来年1月以降のことは何とも言えないが、ワクチン接種が広がる中で、国内外とも巣ごもり需要による住宅ブームは落ち着いてくる」(同社幹部)と説明する。

分譲住宅最大手の飯田グループホールディングスは「市場の動向を注意深く見守っている」(同社幹部)と静観の構えだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンで日本人乗った車に自爆攻撃、1人負傷 警

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO

ビジネス

米株「恐怖指数」が10月以来の高水準、米利下げや中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中