最新記事

M&A

ティファニーは「眠れる美女」 LVMHによる買収完了、大改革へ

2021年2月1日(月)10時04分

「あまりうまくいっていない店舗は、すぐに閉鎖されてしまう」

アルノー氏は、自社店舗を抜き打ち訪問することで知られる。2019年末に買収計画が発表された後には、韓国ソウルのティファニー店舗を訪れ、清掃用具が出しっ放しだ、商品に「品切れ」と書かれたピンクの付せんが貼ってある、などと細かい不手際を指摘した。関係者が明らかにした。

LVMHとティファニーはコメントを控えた。

ブランド統合のシナジーを期待

LVMHとティファニーは買収を巡って訴訟合戦を繰り広げた末、買収価格をわずかに引き下げて総額158億ドルとすることで最終合意した。その後、アルノー氏はティファニー側をなだめる発言をしている。

ニューヨークの8日の会合では、ここ数カ月にティファニーが見せた底力はLVMHの期待を上回ったと持ち上げた。出席者の1人が明らかにした。LVMHは以前、ティファニーはコロナ禍中の経営がお粗末で、見通しは「悲惨」だとしていた。

ティファニーは直近の四半期、オンライン販売や中国事業でいくらか失地を挽回した。コロナ禍の間、宝飾品業界は全般に他の業界より底堅く推移している。ここ数年、宝飾品は高級品セクターの中で最も成長が著しい分野のひとつだ。

ティファニーは競合他社に比べ、アジア太平洋地域での事業展開が小さい。同地域は高級品販売のけん引役で、19年には世界の販売総額44億ドルの28%を占めた。これに対し、欧州の割合は11%だ。

11年にLVMH傘下に入ったイタリアの高級品ブランド、ブルガリのジャンクリストフ・ババン最高経営責任者(CEO)はロイターのインタビューで、ショッピングモール経営者と店舗の交渉をする時も、空港と広告掲示板への掲載で交渉する時も、数十のブランドを傘下に収める一大グループとして対峙したが、はるかに有利だと語った。

「到着ロビーのスクリーンを(LVMH傘下の高級時計ブランド、タグ・ホイヤーと)共有できる」と説明。「わが社にはこうしたシナジー効果があったし、ティファニーもそれを得て収益性が向上するだろう」と述べた。

「このブランド(ティファニー)は眠れる美女だった。LVMHの登場が目覚ましになる」とババン氏は言う。

マーケティング攻勢か

1837年創業のティファニーは、オードリー・ヘップバーンが主演した1961年の映画「ティファニーで朝食を」から世界的な名声を得た。そして今、フレッシュな広告攻勢をかければ新たな支えになるかもしれない。

アルノー氏の4人の子供の1人、アレクサンドル・アルノー氏(28)がティファニーの執行バイスプレジデントに就任し、商品とコミュニケーションを司る。同氏はニューヨークの8日の会合で、広告キャンペーンと若い顧客の獲得に力を入れる方針を示した。

アレクサンドル・アルノー氏は、LVMHによるスーツケースブランド、リモワの買収に助力。同社CEOだった当時は、ディオールとのコラボレーションでリモワのスーツケースをファッションショーに登場させ、流行最先端のイメージを築いた。

ティファニーの新CEOには、ヴィトン幹部だったアンソニー・レドル氏が就任し、アレクサンドル・アルノー氏と二人三脚で経営にあたる。

ティファニーの前CEO、アレッサンドロ・ボリオーロ氏はニューヨーク五番街にある旗艦店を数年かけて改装してきた。同氏の下で購入した80カラットを超えるオーバル・ダイヤモンドはネックレスにセットされ、同社で最も高価な宝飾品となる予定だ。

(Francesca Piscioneri記者、Silvia Aloisi記者、Sarah White記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界の石油市場、26年は大幅な供給過剰に IEA予

ワールド

米中間選挙、民主党員の方が投票に意欲的=ロイター/

ビジネス

ユーロ圏9月の鉱工業生産、予想下回る伸び 独伊は堅

ビジネス

ECB、地政学リスク過小評価に警鐘 銀行規制緩和に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 9
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中