最新記事

2021年に始める 投資超入門

そしてアメリカ経済の「回復」が始まる

LOOKING PAST TRUMP, LOOKING PAST THE VIRUS

2021年1月9日(土)12時15分
ダニエル・グロス(ビジネスライター)

消費と雇用の回復には、連邦政府の景気刺激策も追い風となった。2020年3月に成立した総額2兆2000億ドルの支援策(通称CARES法)により、全世帯への現金支給や失業保険の給付延長、雇用維持を目的とした緊急融資などが行われた。

しかし大統領選が迫った秋口には追加支援策で与野党が合意できず、多くの施策が期限切れを迎え、用意した資金も尽きた。選挙後も現職大統領による抵抗で混乱が続いたため、期待された与野党協調はなかなか実現しない。このままだと、次はワクチン効果を待つしかない。

magSR20210109lookingpast-2.jpg

ワクチンが一般に普及すればどんな支援策よりも経済を回復させる後押しとなる VICTORIA JONES-POOL/GETTY IMAGES

「ステイホーム」企業に恩恵

2021年にワクチン接種が想定どおり進めば、どんな法律よりも経済の再生に役立つ。ロックダウン(都市封鎖)の形態は州によって(同じ州内でも都市によって)大きく異なっていた。そして政府の規制や国民の消費抑制によって、現実の経済活動は大きく損なわれていた。

「ワクチンは経済と市場にとって、バイデン政権の政策より重要な転機となる」。そう言ったのはゴールドマン・サックスのストラテジスト、デービッド・コスティンだ。ファイザー社によるワクチン開発の成功は「これから徐々にでも社会を正常化させる前向きな話」だと評する。

ワクチン接種が進めば経済分野、とりわけホテルやレストラン、スポーツジム、輸送、小売りなど「人手」に依存する業種が急速に息を吹き返すだろう。それによって経済成長や株価にもよい影響が出るはずだ。ワクチン接種で免疫を持つ人が増えれば、それだけ多くの人が私生活でも仕事の面でも元の状態に戻れる。

「この感染症の炎が下火になり、外に出て歩き回っても安全と誰もが感じるようになれば、消費がどっと増えるだろう」と言うのはノーベル経済学賞の受賞者で民主党支持のポール・クルーグマン。「そうなればジョー・バイデンは(ロナルド・レーガン元大統領が景気の回復を自画自賛した)『モーニング・イン・アメリカ』的な景気回復を謳歌できる」かもしれない。

もちろん、マクロな数字で見えるのは表面的なことだけで、実際の景気回復局面には勝者もいれば敗者もいる。株式市場でも同様だ。

いわゆる「ステイホーム」の時期には、テレビ会議アプリのズーム、自宅で使うワークアウト用品のペロトン、オンラインショッピングのアマゾンといった企業の株が大きな恩恵を受けた。

2020年11月のニューヨーク・タイムズ紙によれば、アマゾンは全世界で毎日1400人も雇用を増やしていた。同年1~10月の新規雇用者数は42万7300人。今や全世界の従業員は120万人を超え、1年前の1.5倍以上だ。ただし、遠からず大幅な人員削減を余儀なくされるのは間違いない。

多くのエコノミストが危惧するのは、長期にわたる構造的なダメージだ。もともと資金力のある優良企業はコロナの危機も巧みに乗り切るだろうが、彼らの成長の陰では往々にして中小企業が犠牲になる。

magSR20210109lookingpast-3.jpg

2020年にはズームなど「ステイホーム」企業の株価が上昇したが MARK MAKELA/GETTY IMAGES

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イタリア、財政目標超える成果で好循環に入ると評価=

ワールド

韓国、対米通商合意の可能性高まる APEC首脳会議

ビジネス

日経平均が最高値更新、高市トレード再燃 米地銀・米

ビジネス

ポルシェ、ブルーメCEOの後任にマクラーレン元トッ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 6
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中