最新記事

アメリカ経済

バイデン、約200兆円規模の追加経済対策案 期待と財源への不安が交錯

2021年1月15日(金)11時18分

バイデン次期米大統領が発表した1兆9000億ドル規模の追加経済対策案は、投資家にとって「もろ刃の剣」となるかもしれない。写真はデラウェア州ウィルミントンでスピーチするバイデン氏(2021年 ロイター/Tom Brenner)

バイデン次期米大統領が発表した1兆9000億ドル規模の追加経済対策案は、投資家にとって「もろ刃の剣」となるかもしれない。米経済持ち直しへの楽観的な見通しを維持してくれるが、同時に財源をどうやってねん出するかという懸念も浮上するためだ。

5日のジョージア州上院選決選投票で、次期政権与党となる民主党の候補2人が勝利して同党が上下両院を制することが決まってからの1週間で、追加対策期待を背景にS&P総合500種は3%近く上昇した。

しかしその裏で米国債は価格が下落。資金手当てに向けた国債増発は不可欠との観測から、10年国債利回りは昨年3月初め以来の高水準に達し、経済全般の借り入れコストを押し上げつつある。

LPLファイナンシャルの株式ストラテジスト、ジェフ・ブックバインダー氏は「現時点では市場は追加対策をはやし、全面的な景気回復への架け橋が強化されると歓迎している。(ただ)逆に見ると、株価を圧迫しかねない金利高騰もしくは増税という代償を、市場が払う必要が出てくる可能性がある」と指摘した。

既に一部の投資家は、株価水準の高さに警戒感を抱いている。向こう1年の業績がよほど堅調でない限り、跳ね上がった株価収益率(PER)を正当化できないからだ。ファクトセットによると、S&P総合500種銘柄のPERは足元で22.3倍と、2000年3月ごろに記録した過去最高の24.4倍に迫っている。

S&P総合500種は年初来では約1.1%の下落。この間、経済対策で恩恵を受ける景気敏感株が10%強上昇した半面、昨年の「勝ち組」だったハイテク株は1%近く下げた。ハイテク企業など、より長期的な利益が想定される成長株を脅かすのが金利上昇だ。

先送りのつけ

さまざまな救済措置を盛り込んだ今回の経済対策案は、新型コロナウイルスの感染者が急増し、企業や投資家がパンデミック収束時期の見通しを後退させている中で打ち出された。米労働省が14日発表した先週の失業保険新規申請件数は96万5000件と、昨年8月以降で最も高い水準となり、ロイターがまとめたエコノミスト予想の79万5000人を大幅に上回った。昨年12月の非農業部門雇用は、8カ月ぶりに前月比で減少している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB後任議長選び、「正式プロセス」既に開始と米財

ワールド

イスラエル、シリア南部で政府軍攻撃 ドルーズ派保護

ビジネス

独ZEW景気期待指数、7月は52.7へ上昇 予想上

ビジネス

日産が追浜工場の生産終了へ、湘南への委託も 今後の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 6
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 7
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 8
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 9
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 10
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中