最新記事

不動産

コロナショック後はマンションの買い時か──新築・中古マンションの価格推移から考える

2020年5月13日(水)12時55分
渡邊 布味子(ニッセイ基礎研究所)

一方、中古マンションの価格はどうだろうか。先ほどと同様に、中古マンションの価格と成約戸数の推移を見てみると、新築マンションとは逆に、図表5のとおり正比例していることがわかる。また、価格帯も新築価格の水準とはあまり関係がない。

注目したいのは、リーマン・ショック後の価格にはほとんど変化が見られなかったことである。これには新築マンションとは別に、中古マンション価格が下落しにくい理由が関係していると考える。住宅を買う人の多くは住宅ローンを利用するが、金融機関はローン残高が残る状態では抵当権を外さない。抵当権をはずすことができる住宅ローン残高以上の価格で売らなければマンションの売却は難しいことから、中古マンションの価格はローン残高の水準を底に維持されやすいのである。

また、売買件数についてはリーマン・ショック後に増加している。付け加えるなら中古マンションの売買データは、広く公開して買主を募集した取引を記録するものであり、競売などの公的取引、売り主と買い主の直接取引、広く公開する前に買主が決まった取引などは含まれず、このデータの外での売買件数についても増加していたと考えられる。

なお、誰かが一度住めば中古マンションとなるが、物件それぞれにより価格は大きく違う。築年が浅いほど価格が高いのはもちろん、築年が経過していても、内装を新築同様にすることで新築に近い価格で売買される物件もある。一方で、経年劣化により新築の半値以下で取引される物件も多い。特に経済が低迷する局面においては、物件毎の価格の幅が出やすくなるため、運が良ければ良い物件に巡り合える可能性が上がるのではないだろうか。

Nissei_Mansion5.jpg

過去の推移や今の新築マンションの売り主の顔ぶれを見るに、高値水準でコロナショックが起こったからといって、新築マンションの価格がすぐに下落することはなさそうだ。

しかし、2019年の新築マンション市場は明らかに減速しており、2020年の売れ行きはコロナショック等による経済の低迷を受けてさらに落ち込むことが予想される。落ち込みが続けば売り主はキャッシュバックや割引を検討せざるをえないだろう。中古マンションについても売り出し件数の増加が見込まれ、新築マンションよりお手頃で似た条件の物件を見つけられる機会が増えると思われる。

また、近年は取得競争により高値となった土地への投資費用を回収しようとしてマンション価格が高騰してきた側面があるが、マンションの売り主が土地を割安に取得できる環境になれば、2、3年後に竣工する新築マンションは今よりお買い得な物件も出てくるかもしれない。

これから購入を考える人にとっては、より良い環境になってくるのではないだろうか。

Nissei_Watanabe.jpeg[執筆者]
渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)
ニッセイ基礎研究所
金融研究部 准主任研究員

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中