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三越伊勢丹HD、全店臨時休業なら月150億円の利益減 今後はEC強化を推進

2020年5月11日(月)18時00分

三越伊勢丹ホールディングスは、2021年3月期の業績予想の開示を見送った。写真は都内で2018年1月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

三越伊勢丹ホールディングスは11日、2021年3月期の業績予想の開示を見送った。新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言で店舗は臨時休業を余儀なくされており、影響は甚大なものになりそうだ。同社によると、全店休業により利益面では月150億円の影響が出る。コロナ後の消費行動も見据えて、ECの強化を図る方針だ。

4―6月期決算を発表する7月には通期見通し、4―9月期決算を発表する11月には中期計画の修正を発表したいとしている。リフィニティブがまとめたアナリスト8人の予想の今期営業利益予想平均は179億円となっている。

杉江俊彦社長は決算会見で「業績はコロナの影響によって全く異なる。今は見通すことはできない」とし、全世界的な不況などもあり「終息後にすぐに良くなる見通しは立てられない」とも述べた。

全店が臨時休業の場合は月150億円の利益減となるほか、外出自粛による消費低迷では月30―40億円の利益減になるという。

政府は、14日に一部地域の緊急事態宣言解除を検討している。緊急事態宣言が解除され、全業種で自粛が解除されれば、同社も、その地域にある店舗を再開させる意向だ。

また、入店時のサーモグラフィー導入や社員用ロッカーの整備など、コロナ対策として10―15億円のコスト発生を見込んでいる。

一方、21年3月期には500億円の投資を計画していたが、店舗の改修(170億円)の凍結や縮小など、不要不急な投資を抑制していく。不採算店舗の閉鎖については杉江社長は、コロナによって「早まる可能性はなくはない」としながらも「現段階で計画はない」と述べた。

同社はこれまで、オンラインで商品をみて店舗で購入するという「シームレス化」を進めてきたが、コロナの影響で店舗のあり方も変化すると予想。今後は、オンラインで購入も完結するような取り組みを強化するとしている。

2020年3月期の売上高は1兆1191億円(前年比6.5%減)、営業利益は156億円(同46.4%減)、最終損益は111億円の赤字(前期は134億円の黒字)となった。同社は、4月27日に最終損益を従来の黒字見通しから赤字見通しへと下方修正している。

なお、CP発行やコミットメントラインの追加設定により、当面の事業継続に必要な手元流動性は確保できているとした。伊倉秀彦・最高財務責任者(CFO)は「全店休業が半年続いても大丈夫だ」と述べた。

(清水律子)

[ロイター]


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