最新記事

ビジネス

スポーツ産業の成長が名目GDP600兆円達成への鍵

2020年4月15日(水)12時05分
藤原 光汰(ニッセイ基礎研究所)

「観る」スポーツといえば、2019年はラグビーワールドカップが日本で開催されたことが記憶に新しい。多くの国民の注目が急激に集まり、ラグビー日本代表を象徴する「ONE TEAM」は流行語大賞にもノミネートされた。また、東京オリンピックの開催が予定されていることも、スポーツを「観る」ことへの関心を高めている。

「する」スポーツは伸び悩んでいるが、「スポーツ人口の増加がスポーツ市場の拡大を支える」と2016年の日本再興戦略に記載されているように、「する」スポーツは市場全体の活性化に不可欠である。

スポーツ実施率は上昇している

第3次産業活動指数でみた「する」スポーツの市場は伸びていないが、スポーツ実施率3は増加傾向にある。成人のスポーツ実施率について推移をみると、「する」スポーツの人口が堅実に増加していることが確認できる(図表2)。週1日以上スポーツを行う成人の割合は男女ともに増加しており、男女全体での割合は1991年の27.8%から2019年は53.6%まで増加した。また、週3日以上スポーツを実施する人の割合も増えており、頻度にはばらつきがあるが、以前と比較すると運動が習慣化したと考えられる。

手軽に運動を実施できる施設の代表はフィットネスクラブである。フィットネスクラブの利用者数は増加傾向にあり、2019年は2.21億人と2000年の0.93億人から2倍以上も増加している(図表3)。背景には、営業形態の多様化(24時間営業、パーソナルトレーニングの利用、平日限定で低価格、小規模で低価格帯のコンビニタイプのサーキット型ジムなど)により、様々な利用者に門戸が広がり、多くの人が利用しやすくなっていることがある。また、働き方改革による余暇時間の増加や、健康経営の一環として運動を推進する企業が現れ始めていることもその要因として考えられる。

フィットネスクラブは、低価格プランなどの打ち出しによる集客効果などもあり、客単価は低下しているが、利用者数が大きく伸びているため、2019年の売上高は3,400億円と2000年の1.7倍に増加した(図表3)。

Nissei200415_2.jpg

需要側からみたスポーツの規模の推移

第2章でみたスポーツ市場の推移(図表1)は、供給側からみたデータであり、スポーツ市場を十分に捕捉できていない可能性がある。ここで家計調査を用いて需要側からスポーツ市場の試算を行ったところ、「する」スポーツ市場が拡大していることが確認できた(図表4)。

Nissei200415_3.jpg

――――――――――
3 スポーツ庁の世論調査において、1年間に運動やスポーツを実施した日数を全部合わせると、どの程度の頻度になるかを質問した結果。運動・スポーツの種目は、ウォーキング(散歩・ぶらぶら歩き・一駅歩きなどを含む)や階段昇降(2アップ3ダウン等)など、例を踏まえつつ選択肢として約60項目が提示されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国当局、エヌビディア H20半導体の使用回避を国

ビジネス

日経平均は最高値、一時1100円超高 米関税や業績

ワールド

豪中銀、全会一致で予想通り利下げ 追加緩和の必要性

ビジネス

英雇用6カ月連続減少、賃金は高い伸びを維持 中銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 7
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 8
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中