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米FRBが緊急利下げ金利ゼロ付近へ 債券買い入れ再開や他のツール活用も

2020年3月16日(月)09時30分

米連邦準備理事会(FRB)は15日、新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、米経済を支援するため、2週間足らずで2回目の緊急利下げを実施した。写真はFRBのパウエル議長。3月3日、ワシントンで撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

米連邦準備理事会(FRB)は15日、政策金利をゼロ付近に引き下げ、債券買い入れを再開するとしたほか、危機時の対応手段の活用に踏み切った。新型コロナウイルスの感染拡大で急速に悪化する世界経済を支援するため、日銀など主要中央銀行と協調してドル資金の供給を拡充することで合意した。

FRBは声明で「新型コロナウイルスによる影響が短期的に経済活動を圧迫し、経済見通しにリスクをもたらすだろう」と指摘。「こうした状況を踏まえ、委員会は誘導目標の引き下げを決定した」と説明した。

フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を100ベーシスポイント(bp)引き下げ、0─0.25%としたほか、今後数週間にバランスシートを少なくとも7000億ドル拡大すると表明した。

また「委員会は経済がこのイベントを切り抜け、最大雇用と物価安定という目標の達成に向けた軌道上にあると確信が持てるまで、この目標水準を維持する見込みだ」とした。

FRBはこのほか、銀行に対し、金融危機以降に資本バッファーとして積み上げてきた数兆ドル規模のエクイティー・流動資産を活用して、新型ウイルスの影響で打撃を受けている企業や家計に融資するよう促した。

さらに、FRBとカナダ銀行、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、日銀、スイス国民銀行は、米ドル・スワップ協定に適用される金利を25bp引き下げ、新しい金利を米ドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ・レートに25bp上乗せしたものとすることに合意した。

これらの中銀は、金融危機を受けてスワップ協定を結んだ。

FRBはまた、プライマリークレジットの金利を150bp引き下げ0.25%とし、金融機関に緊急貸出制度の活用を促す。

資本バッファーを活用する銀行を支援するため、26日から預金準備率もゼロに引き下げる。

FRBは「この措置により、数千社の預貯金取扱金融機関の預金準備が取り除かれ、家計や企業への融資促進につながるだろう」としている。

トランプ米大統領はFRBの措置を受け、「良いニュースで非常に満足」と述べた。

FRBは3月3日の緊急会合で、政策金利をすでに50bp引き下げていた。

FRBは今月17─18日に次回の連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する予定だった。

FRBの緊急利下げを受け、S&P500先物は約5%下落、ドルも下落している。米原油先物はバレル当たり1ドル以上下げてこの日の安値をつけた。

元FRBのエコノミストでマクロポリシー・パースペクティブズ創業者のジュリア・コロナド社長は、今後FRBがさらなる支援策を打ち出すかもしれないとの見方を示した。「これが始まりであり、まだ全容は見えていないと思う」と述べ、FRBが財務省と協調して、企業向けの短期金融市場への流動性供給を目的としたものなど、他の緊急融資措置を打ち出す可能性があると指摘した。

プルデンシャル・ファイナンシャル(ニューヨーク)のチーフ・マーケットストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は、この日FRBがとった劇的な手段は「FRBの真剣さを示している」とし、FRBは信用市場や米国債市場の流動性をターゲットにして、市場が目詰まりを起こさずに確実に機能を果たせるようにしようとしていると語った。

*内容を追加しました。

[ワシントン 15日 ロイター]


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