最新記事

アメリカ経済

米失業保険、過去最多の328.3万件申請 新型コロナウイルスで解雇急増

2020年3月27日(金)00時45分

米労働省が26日に発表した21日終了週の新規失業保険申請件数は前週比300万1000件増の328万3000件と、過去最多となった。ニューヨークで15日撮影(2020年 ロイター/JEENAH MOON)

米労働省が26日に発表した21日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比300万1000件増の328万3000件と、過去最多となった。新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための厳しい対策によって経済活動が急停止し、レイオフが急増した。雇用の伸びは米史上最長期間続いていたが、ここにきてマイナスへ転じたとみられる。市場予想は100万件だった。予想の上限は400万件だった。

これまでの最高記録は1982年に付けた69万5000件だった。

新型ウイルスの感染拡大を受け米連邦準備理事会(FRB)は大規模な支援策の導入を余儀なくされた。米議会では2兆ドル規模の景気刺激策が審議されている。

エコノミストは米経済が既に景気後退入りしているとみる。失業保険申請件数は労働市場の現状を映し出す指標とされている。

労働省は当該週の申請件数の急増要因として新型ウイルスの感染拡大を挙げた。「3月21日終了週の失業保険申請件数の増加は新型ウイルスの影響によるもの」と指摘。「各州は引き続き、宿泊と食品サービスを中心に広範なサービス産業への影響を指摘した。そのほかに失業が大幅に増えた産業はヘルスケアや社会扶助、芸術、娯楽、輸送・倉庫、製造業だった」とした。

全米の人口の半分近くを占める最低18州の州知事が、主に自宅にとどまるよう指示し、「必須でない」事業も休業するよう命じた。エコノミストによると、労働人口の5分の1が何らかの形で封鎖状態にある。

今回の失業保険統計は3月の雇用統計と調査期間が重なっていないため、関連性はない。3月の雇用統計は3月14日までの調査を映し出す。ただエコノミストは、当該週の失業保険申請件数も増えていたことを指摘し、3月の雇用統計で雇用者数が減ったことを示唆すると言う。9年半続いた雇用の伸びが終わることとなる。

ムーディーズ・アナリティクス(ペンシルべニア州)のシニアエコノミスト、マーク・ザンディ氏は「雇用は3月に減少する」とした上で、「多くの人が同時に失業保険を申請しようとしているため、レイオフされた人が申請できていないとの報告がたくさんある。向こう数週間で何百万人にもなるだろう」と指摘した。

オックスフォード・エコノミクス(ニューヨーク)の首席エコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「全国的に部分的なロックダウン(都市の封鎖)が広まり、経済活動が突如として停止する中、過去に例を見ない規模で失業が増加し、米国は最悪の景気後退に陥る」と指摘。「経済活動の停止が一段と進む中、失業保険申請件数はさらに増加する」との見方を示した。

当該週はカリフォルニア、ワシントン、オハイオ、ニュージャージー、イリノイ、テキサス、マサチューセッツの各州で申請件数の増加が10万件を超えたほか、ペンシルベニア州では増加数は30万件を超えた。

労働市場の動向をより正確に反映するとされる4週間移動平均は264万7034件増の290万件と、過去最悪となった。

失業保険受給者総数は14日までの週に10万1000件増の180万3000件と、2018年4月以来の高水準となった。4週間移動平均は2万7500件増の173万件だった。

受給者総数は2月と3月にまたがる調査期間に11万件増加。これを踏まえると、3月の失業率は3.5%から上昇する公算が大きい。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・欧州当局「新型コロナウイルス、夏に終息の公算小 高温多湿でも活発」
・新型コロナウイルス感染症で「嗅覚がなくなる」という症例が多数確認される
・新型コロナ、急がれる医薬品開発──抗ウイルス薬やワクチンがなかなかできないのはなぜ?


20200331issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月31日号(3月24日発売)は「0歳からの教育 みんなで子育て」特集。赤ちゃんの心と体を育てる祖父母の育児参加/日韓中「孫育て」比較/おすすめの絵本とおもちゃ......。「『コロナ経済危機』に備えよ」など新型コロナウイルス関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却承認 ハイマースなど過去最大の

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中