最新記事

貿易戦争

今度は米仏が貿易戦争 仏GAFA念頭のデジタル税導入、米政府はシャンパンなどに追加関税

2019年12月3日(火)10時15分

米通商代表部(USTR)は2日、フランスのデジタルサービス税が米IT企業を不当に差別しているとして、フランスからの24億ドル相当の輸入品に最大100%の追加関税を課す可能性があると明らかにした。写真は2016年9月、フランス北東部アイでグラスに注がれるシャンパン(2019年 ロイター/Benoit Tessier)

米通商代表部(USTR)は2日、フランスのデジタルサービス税が米IT(情報技術)企業を不当に差別しているとして、シャンパン、ハンドバッグ、チーズなどフランスからの24億ドル相当の輸入品に最大100%の追加関税を課す可能性があると明らかにした。

USTRは「通商法301条」に基づく調査の結果、仏デジタル課税は「国際税制の一般的な原則に合致せず、対象となる米企業にとって異例の重荷だ」と結論付けた。

仏デジタル課税はアルファベット傘下のグーグルやフェイスブック、アップル、アマゾン・ドット・コムなどが対象となる。

ライトハイザーUSTR代表は、オーストリア、イタリア、トルコのデジタル課税についても同様の調査を行うか検討中だとした。

また、EU加盟国はデジタルサービス税や米IT大手を標的としたその他の措置を通じて、米企業を不当に狙った保護主義的な姿勢を強めていると指摘し、USTRはそうした動きに対抗することに注力していると説明した。

USTRは追加関税の対象品目について来年1月14日までパブリックコメント(意見公募)期間を設け、1月7日に公聴会を開く。関税発動予定日は明らかにしなかった。

今回関税の対象に含まれたスパークリングワインやハンドバック、化粧品などは、航空機補助金を巡り米国が課した25%の追加関税では対象外となっていた。関税が発動されれば、高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)やや化粧品大手ロレアルなどが打撃を受ける。

米議員やIT業界団体はUSTRの調査結果を歓迎する立場を示した。上院財政委員会のグラスリー委員長(共和党)と同委員会の民主トップであるワイデン上院議員は共同声明で、「仏デジタルサービス税は不当で保護主義的、差別的だ」と非難した。

在米フランス大使館とワシントンにある欧州連合(EU)代表部の広報担当からコメントは得られていない。

ただ、USTRの調査結果が出る前に、仏政府の高官は、デジタル税は米IT企業だけを標的にしているわけではないとあらためて反論し、USTRの結論に異議を唱える考えを示した。

「フランスがデジタル税を諦めることはない」と強調した。

フランスのデジタルサービス税は同国内の売上高が2500万ユーロ(2786万米ドル)で、世界での売上高が7億5000万ユーロ(8億3000万米ドル)の企業に対し、デジタルサービス収入の3%を徴税する。

*内容を追加しました。

[ワシントン 2日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191210issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月10日号(12月3日発売)は「仮想通貨ウォーズ」特集。ビットコイン、リブラ、デジタル人民元......三つ巴の覇権争いを制するのは誰か? 仮想通貨バブルの崩壊後その信用力や規制がどう変わったかを探り、経済の未来を決する頂上決戦の行方を占う。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米8月の求人件数は小幅増、採用減が労働市場の減速を

ワールド

トランプ氏「おそらく政府閉鎖になる」、民主党に「不

ビジネス

米CB消費者信頼感、9月は予想下回る 雇用機会巡る

ワールド

米国防長官、緊急会議で軍幹部の肥満など批判 トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 5
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 6
    カーク暗殺の直後から「極左」批判...トランプ政権が…
  • 7
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 8
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 9
    博物館や美術館をうまく楽しめない人は...国立民族学…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 3
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒りの動画」投稿も...「わがまま」と批判の声
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 8
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中