欧米のOEM主軸の中国メーカー、米中摩擦で自社ブランド強化にシフト

台北に本拠を置くロボット掃除機メーカーの松騰実業(マツテック)はこれまで10年以上も、フィリップスやハネウェルといった欧米企業とOEM(相手先ブランドによる生産)契約を結び、中国に設立した工場から米国などの海外市場に製品を出荷してきた。松騰の深セン工場で8月撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)
台北に本拠を置くロボット掃除機メーカーの松騰実業(マツテック)はこれまで10年以上も、フィリップスやハネウェルといった欧米企業とOEM(相手先ブランドによる生産)契約を結び、中国に設立した工場から米国などの海外市場に製品を出荷してきた。
こうした戦略が実を結び、同社は世界第2位のロボット掃除機メーカーに成長した。
しかし今、同社は激化する一方の米中貿易摩擦の犠牲になった多くの企業の1つに名を連ねている。
米政府が中国からの輸入品に25%の関税を適用したため、昨年の米国における売上高は20%も落ち込み、中国にある11の組み立てラインのうち2つの閉鎖に追い込まれた。
この輸入関税により、松騰は2017年に「ルンバ」を製造するアイロボットとの訴訟に巻き込まれて既に幻滅を感じていた米国市場に完全に見切りをつけ、昨年12月に事業戦略を転換。自社ブランド「Jiaweishi」をアリババやピン多多(ピンドォドォ)の電子商取引サイトで販売することに注力するようになった。
15年に立ち上げたJiaweishiを今までそれほど重視してこなかった同社だが、深センにある2つの子会社の幹部を務めるテリー・ウー氏は「米中摩擦がわれわれを目覚めさせた。海外市場だけに頼ることはできず、むしろ中国で自社ブランドの足場を築くべきだと気がついた」と語った。
さらにウー氏は「OEM企業でいるのは、毎年適度に雨が降るのを当てにしている農家のようなものだ。自前のブランドを構築し、やや価格を引き下げ、外国ブランドと同品質の製品を提供しないという手はない」と付け加えた。
実際のところ、中国に生産拠点を持つ米国市場向けの事業比率が高い企業にとって、他国に生産を移管するという方法を除けば、自社ブランドの推進以外に戦略上の選択肢は乏しい。
これを長い目で見ると、大手外国企業にとっては市場競争が激化することを意味する。
ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、ジェーソン・ディン氏は「かつて提携相手やサプライヤーだった中国企業がライバルになりつつある」と指摘し、外国ブランド側も対応を強化する必要が出てくるとの見方を示した。