欧米のOEM主軸の中国メーカー、米中摩擦で自社ブランド強化にシフト
電子商取引を活用
ワイングラスなどを製造する年間売上高8億元(約120億円)の安徽徳力(Anhui Deli)も、米国の関税で痛手を受けている。
マーケティングディレクターのCheng Yingling氏は「今年になるまで、米国はわれわれにとって一番の成長市場だったが、貿易戦争のために顧客が発注をためらうようになり、米国からの多くの注文が取り消された」と打ち明けた。
同氏によると、米政府が今月発動した追加関税によって中国のガラス製品の関税率は40%に達し、業界にとって大打撃になっているという。
ところが中国国内の電子商取引を通じた販売が好調なことから、そうした痛みはある程度和らげられている。最近はピン多多と手を組んだことで、新しいガラス容器の売り上げは毎月5万個強と、実店舗経由で売った場合の想定の約3倍に達した。
安徽徳力はパキスタンに新工場を設立することも決定し、来年1月から稼働する見通しだ。
ただ生産拠点を中国国外に移すには時間がかかるし、さまざまなリスクも伴う恐れがある。
松騰や米ウォルマートに「Onn」というブランドでテレビを供給している深セン市兆馳(Shenzhen MTC)の両社も一部の生産をベトナムに移管することを検討したが、トランプ政権が6月にベトナムも追加関税対象に加えると示唆したため、結局断念した。
深セン市兆馳は、ピン多多との提携も始めた。
ピン多多は貿易摩擦を商機とみなして、昨年12月に製品開発に関するコンサルティングサービスを始動させ、中国国内ですぐにも事業を拡大したがっている企業に積極的な売り込みをしている。
深セン市兆馳のバイスプレジデント、デービッド・ファン氏は「ピン多多の方からわれわれに声をかけ、消費者向けのメーカーのビジネスモデルがほしいと言ってきた。彼らが中小都市で非常にうまく事業を展開していることや、(他の電子商取引企業と比べて)家電メーカーの提携相手が少ない点を考慮し、一緒にやっていくことを決めた」と説明した。
一方松騰のウー氏は、中国市場に目を向ける新戦略が大成功を収め、Jiaweishiのブランドで既に10万台を超えるロボット掃除機を販売したと胸を張った。いったん閉鎖した2つの組み立てラインも再開するつもりで、来年初めまでに3つのラインを追加する計画だ。
同氏は「中国には大きなチャンスがあると思う。ロボット掃除機の普及率は米国が17%なのに対して中国はわずか1.5%しかない。結局のところ、ここには10億人以上(の消費者)がいるのだ」と話した。
(Pei Li、Brenda Goh記者)


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