最新記事

日本企業

日本の採用面接は人物を正しく評価できない グーグルも否定した「面接の意味」

2019年3月25日(月)12時40分
曽和 利光(人材研究所 社長) *東洋経済オンラインからの転載

そもそも採用試験とは、求職者が入社後にどれだけ活躍するかを予測するために行われるものです。アメリカでは、その予測がどのくらい妥当なものであったかを解析する研究も進んでいます。そうした研究によれば、「適性検査」「グループディスカッション」「ワークサンプル(実際に仕事をさせてみること)」「面接」といったさまざまな採用選考の結果と、入社後の評価を比較検証したところ、面接の妥当性が最も低いことが明らかになりました。

グーグル社の会長、エリック・シュミットらが著して話題になった『How Google Works――私たちの働き方とマネジメント』(日本経済新聞出版社)にも、それを裏づける話が出てきます。グーグルも以前は難問奇問を出す面接を行っていました。例えば「富士山を動かすにはどうしたらよいと思いますか?」といった奇抜な質問を唐突にぶつけ、それに対する応答で頭の回転のよさを測っていたのです。ところがその面接の得点と入社してからの成果には因果関係がないことがのちに判明し、そのような面接を廃止したそうです。

いちばんワリを食うのは日本の学生たち

現在、グーグルではすべてのタスク(業務、任務)において、人間がなんとなく「いい」と思い込んでいる仮説をそのまま適用するのではなく、「本当にそうなのか?」をデータに基づき検証しているそうです。そして仮説が間違っていたと判明したら、最善の方法を再定義し、トライ&エラーを重ねながら精度を高めています。

その姿勢は採用にも貫かれており、構造化面接を実施したり、従業員に関する膨大なデータを収集・分析して人事や労務に活かす「ピープルアナリティクス」といった手法をいち早く導入したりしています。ところが日本においては、採用に関してここまで合理的に取り組んでいるのは、大企業でもほとんど存在しません。

近年、フリートーク面接については「運用がものすごく難しく、妥当性も精度も低い」ことが明らかになってきているにもかかわらず、「これまで、そうやって採用してきたから」というだけで、とくに改善されることもないまま続けられているのです。

そんな不確実な面接であっても、中途採用ならば前職での実績といった具体的な成果を示すことができます。しかし新卒採用の学生には実績がありません。社会経験のない学生が〝不確実性の渦〞のような面接を乗り越えていくのは、本当に大変なことだと思います。

中でもいちばんワリを食うのは、人見知りであったり、口ベタであったりするせいで他人とコミュニケーションをすることに苦手意識を持つ学生――いわゆる「コミュ障」の学生です。というのも、面接ではえてして外向的で、情緒が安定している(ように見える)人が高い評価を受ける傾向があるからです。このことは『採用面接評価の科学』(今城志保著・白桃書房)といった書籍にも詳しく解説されています。

面接は内向的で情緒が不安定な「コミュ障」にとって、不利な採用選考なのです。確かに企業には営業職など、外交的で情緒が安定している人に向いている職種もありますが、それだけでは組織は成り立ちません。経理や総務などバックオフィス系の職種、クリエイティブ系や企画系、研究系の職種など、内向きでオタク気質の人のほうがむしろ向いているような仕事も数多く存在します。

最近は多くの企業が「ダイバーシティ(多様性)」を掲げ、性別や人種、学歴、性格、価値観などが異なる多様な人材の活用を目指しています。しかしその一方で、面接では同じベクトルを持つ人だけが相も変わらず選ばれてしまう。そこに理想と現実の大きなズレがあるのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン首相、米主導「平和評議会」初の首脳会合に

ワールド

ベネズエラ暫定大統領、米から招待と発言=報道

ワールド

トランプ米政権、帰化者の市民権剥奪へ取り組み拡大=

ワールド

ミネソタ州への移民対策職員増派が終了へ、トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 10
    台湾侵攻を控えるにもかかわらず軍幹部を粛清...世界…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中