最新記事

自転車

日本攻略を狙い、電動のスポーツバイクが続々と登場するワケ

2017年10月13日(金)18時58分
木皮透庸(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

そこで自動車の電動パワーステアリング用モーターや電動工具で培ってきた技術を製品開発に活かした。低速域だけでなく、高速域でも強いアシストを可能にした。アシストの強度も「エコ」から「ターボ」まで4段階で細かく設定。結果、ボッシュ製品は「ユニークなサイクリング体験ができるというサイクリストの評価を勝ち取った」(ベニーニ氏)。

同時に、自転車メーカー各社がバッテリーをフレームと一体型にするなどしてデザインを磨き上げた結果、サイクリストだけでなく、流行に敏感な若年層もEバイクに飛びついた。Eバイクが売れ出すと、自転車メーカーは車種を増やし、それがまた新しい顧客層を取り込むという好循環が生まれた。

この流れに乗り、ボッシュは世界のEバイク市場の7割を占める欧州で電動自転車向けモーターユニットのトップサプライヤーに登りつめた。今では70ものブランドに供給する。最大市場のドイツでは25%を超えるシェアを持つ。ボッシュのモーターユニットは自転車ブランドにとっても性能をアピールする武器にもなっている。同社が欧州で製品を供給するEバイクの最低価格は30万円で50万円を超える高級モデルも珍しくない。

日本人サイクリストのこぎ方を徹底研究

ボッシュは欧州での成功体験を活かし、日本でも高価格帯のスポーツタイプ市場を攻略したいところだが、欧州とはやや事情が異なる。それは日本固有の規制だ。電動アシスト自転車では時速10kmまでは人力の最大2倍(200%)でアシストができるが、10kmを超えると徐々にアシスト力を減らし、時速24kmでアシストをゼロにしなければならない。

toyokeizai171013-4.jpg

ボッシュが日本市場向けに投入する電動アシスト自転車用のモーター、バッテリー、サイクルコンピュータ(撮影:尾形文繁)

欧州ではアシストをゼロにする速度は時速25kmで日本とほぼ同じだが、アシスト比率には規制がない。人力の3倍(300%)といった高いアシスト比率も可能なため、スポーツタイプが普及したという見方もある。しかし、一国の法規制を変えるのは容易なことではない。ボッシュは日本の法規制に適合させた上で、日本人サイクリストのニーズを徹底的に調べ上げた製品を投入することにした。

ボッシュが展開するEバイク向けユニットは4種類。日本市場には3.2kgと小型軽量ながらも十分なパワーが出る2タイプの中から、トルクが大きいほうを選んだ。日本人特有の自転車のこぎ方があるからだ。

体格の違いからか、日本人はペダルをこぐのがヨーロッパ人に比べると遅い上、左右にぶれやすい。トルクが大きいほうがスムーズにこぎ出せると考えた。スムーズで自然な加速はストップ&ゴーが多い街中や急な上り坂でサイクリストの脚力をカバーできる。同社としては、通勤やレクリエーションなどを目的に、デザイン性の高い「Eバイク」を欲している若年層向けに訴求したい考えだ。

toyokeizai171013-5.jpg

日本市場向けに投入するサイクルコンピュータのデモ画面。電動アシストのレベルを4段階で選べる(写真:ボッシュ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米の雇用主提供医療保険料、来年6─7%上昇か=マー

ワールド

ウクライナ支援の有志国会合開催、安全の保証を協議

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化

ビジネス

デジタルユーロ、大規模な混乱に備え必要=チポローネ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中