最新記事

キャリアアップ特集

会社での前途を分ける、「影響力のある人」の見極め方

2017年5月22日(月)15時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ローランドは起業家を顧客とする企業の会計士だ。まだ若手だったころから、彼はある著名な起業家とのミーティングに同席することがよくあった。

「テレビで見たことがあるほど有名な人だったから、最初はびくびくしていた。でも彼は、出席者のなかでいちばん下っ端の私にしょっちゅう意見を求めてきた。時々電話してきて世間話をしたり、私には理解できないことについて長々と語ったりするようにもなった。彼が一方的に話すだけだったが、最後にはいつも『ありがとう。とても助かったよ』と言われた。私はほとんど何も話していなかったのに」

求められているのはアイデアでも経験でもなく、客観的視点と話を聞いてもらうこと、そんな場合もある。

相手の目と耳になる

知は力なり。それなのに地位が高くなるほど、周囲の人の本音を知ることは難しくなる。誰が本当は何を考え、感じているかを伝える窓口になれば、権力者にとってあなたの価値は上がる。もちろん、権力者にすりよっていると思われる危険はある。自己保身を目的に、ゴシップや悪口を言う人はどこにでもいるから。だが正しい動機を持つ限り、自分なりの新鮮な意見を伝えるのは賢い戦略になるだろう。

大規模なコールセンターに勤務しているケリーの職場は、異様なほど退職者が多かった。経営陣は社内アンケートを実施したが回答する者はほとんどなく、報奨制度の見直しを始めていた。

「職場に嫌気がさす人が多いのはなぜか、私にはわかっていた。部下に高圧的な態度を取る女性がいて、彼女のせいでフロア全体が嫌なムードになっていた。もうひとつの原因は、ばかばかしい話に聞こえるけれど、社員食堂のメニュー。私がその職場で働き始めてから2年間、メニューはずっと同じ。近くに店も何もなかったから、ほかに選択肢がない。だからアンケートに回答するなんていう遠回しなことはせずに、上の人と直接話がしたいと頼んで、問題点をはっきり伝えた。今では食堂のメニューも少しはましになったし、嫌われ者の女性の態度も変わった。経営幹部からは時々、職場の現状に対する意見を聞かれる。私は愚痴をこぼすより、問題を解決しようとするタイプだから」

「遺産」になる

成功した人間には、いずれ「遺産」について考え始めるときがくる。部下や業界、その外のさらに広い世界に、どんな記憶を残していくか。それを意識したとき、人は「社会に何かを還元したい」という欲求に駆られる。慈善事業に熱心になったり、これまでは避けていた役目を引き受けたり。彼らの奉仕精神にあふれる行動のリストに、もうひとつ項目を加えてあげてはどうだろう? あなたのキャリアのスポンサーになる、という使命を。

ライバルになる恐れはないが、確かな将来性がある人材を育てるのは、賢い時間の使い方――影響力のある人がそう判断する可能性は大きい。成功者は誰かを庇護したがるものだから。庇護してもらうには、勇気を出して頼むことだ。

多くの組織が、大金を投じてメンタリングやコーチングのプログラムを実施しているが、その実態は単なる相談会に近い。内部の事情や情報を知り、その影響力でキャリアアップを助けてくれる人物に、積極的なスポンサーになってもらうほうがずっといい。


『ここぞというとき人を動かす自分を手に入れる
 影響力の秘密50』
 スティーブン・ピアス 著
 服部真琴 訳
 CCCメディアハウス

「キャリアアップ特集」の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

野村HD、1―3月期純利益は568億円 前年同期比

ビジネス

LSEGのCEO報酬、年最大1300万ポンド強に 

ワールド

コロンビア大を告発、デモ参加者逮捕巡り親パレスチナ

ビジネス

タイ自動車生産、3月は前年比-23% ピックアップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中