最新記事

発想術

「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」とヤングは言った

2015年10月26日(月)16時20分

 普通の人だって、毎日いいアイデアを思いついている。毎日新しいものを創造したり、発明したり、発見したりしている。車の修理方法、キッチンの流しや玄関の補修方法、夕食の調理法、売り上げを伸ばす秘訣、節約の仕方、子供のしつけ方、コスト削減の方法、生産量を増やす方法、メモのとり方、企画書の書き方、物事をよりよくしたり、簡単にしたり、安くするための方法――人間が毎日思いついているアイデアをあげていけば、きりがない。

 わたしがヤングの説明を気に入っている第二の理由は、アイデアを得るためのカギだとわたし自身が確信していること、つまり「材料を組み合わせる」という点をずばり突いているからだ。実のところ、わたしがこれまでに読んだアイデアについての本はすべて、組み合わせる、関係づける、並べる、統合する、結合する、といったことに触れていた。

 T・S・エリオットはこう述べている。「詩人の心に詩が生まれる準備が整ったとき、彼の心のなかでは別々の経験が絶え間なく融合されている。普通の人にとって経験とは混沌としたふぞろいのもので、それぞれが別々の断片にすぎない。恋に落ちようが、スピノザを読もうが、その二つの経験が互いを触発することはないし、タイプライターの音や料理の香りと響き合うこともない。だが詩人の心のなかでは、こうした経験が常に新しい『全体』を形作っている」

 作家ジェイコブ・ブロノスキーは言った。「芸術家であろうと科学者であろうと、多種多様な自然のなかに新しい統一を見つけたときに創造が始まる。それまで似ていると思わなかったものの間に類似点を見つけることで、人は創造的になる。創造的な心とは、思わぬ類似性を見いだそうとする心なのである」

 アメリカの詩人ロバート・フロストはこう言っている。「アイデアとは何だろうか。一言で言うなら、アイデアは『連想の産物』である」

 フランシス・H・カルティエはこう述べている。「新しいアイデアを手に入れる方法はただ一つ。それまでにもっていた二つ以上のアイデアを組み合わせたり結びつけたりし、以前は気づかなかった関係が見いだせるような新しい並べ方にすることだ」

 イギリスの作家アーサー・ケストラーはこう考えた。「クリエイティブな独創性とは、何もないところからアイデアを創造することではない。しっかりと確立された考え方を組み合わせ、相互に深め合うというプロセスからアイデアを生むことだ」。彼はこのプロセスを「異縁連想」と呼び、次のように述べている。「創造的な行為とは、すでに存在する事実、考え、技能、技術を新たに発見し、選び、並べ直し、組み合わせ、統合することである」

「新しい『全体』」「思わぬ類似性」「連想の産物」「新しい並べ方」「異縁連想」――言い方はさまざまだが、これらはすべてヤングが言ったこととほとんど同じことを表現している。つまり、

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」

のである。

※パジャマで出社でもOKのほうが、アイデア満載の会社になる:抜粋記事の後編はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ECB総裁の後任、理事会メンバーなら資格ある=独連

ビジネス

欧州委、グーグルの調査開始 検索サービスで不公正な

ワールド

米、中南米からの一部輸入品で関税撤廃 コーヒーなど

ワールド

米上院民主党、対中輸出規制を一時停止したトランプ政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中