最新記事

経営

値上げが中小企業を幸せにする4つの理由(後編)

2015年10月21日(水)06時30分

 また、値上げしたことで広告に費用をかけられるようになり、今までその商品やサービスを知らなかったお客さんにとっては、新しい商品やサービスを知って買うことができるという幸せが得られることになります。

 そして、もっとも重要なお客さんの幸せは、「気に入った商品やサービスを買い続けられること」にあります。

 気に入っていた商品が売られなくなってしまったり、行きつけの店が潰れてしまったりということを、多くの人が経験し、悲しい思いをしていると思います。

 商品がなくなったり、店が潰れたりするのにはいろいろな理由がありますが、たいていは利益が出ていないことが原因です。もう少し高い値段で売っていれば、しっかりと利益がとれて、売り続けられたのに、値上げをしなかったばかりに売り続けることを諦めなくてはいけない、こんな状況は珍しくありません。

 本当にその商品を気に入っているお客さんは、少しくらいの値段の差は気にせず買うものです。もちろん、安いに越したことはありませんが、それよりもその商品がなくなることのほうがもっと困ることなのです。

 少し前のことですが、私はある地方にある養鶏場で売っている鶏肉が気に入っていました。普通のものに比べて、肉に歯ごたえがあり味が濃く感じるのです。養鶏場が直売していたので、値段も通常の肉屋さんで買う鶏肉と変わらないものでした。

 ところがある時、その養鶏場が廃業してしまったのです。聞いてみると、跡取りもおらず、鳥インフルエンザなどのリスクが高まったので廃業するとのことでした。

 その後、幸いなことに、私は気に入っていた鶏肉とほとんど同じ味のものを見つけることができました。同じ地域の別の養鶏場でも歯ごたえのある鶏肉を売るようになったのです。ただし値段は、以前の養鶏場に比べておよそ2倍しました。

 2倍になったといっても、有名なブランド地鶏などに比べると割安なので、私は時々、新しい養鶏場で鶏肉を買っています。正直なところ、そんなに不満はありません。でも、もともとの養鶏場があと何割かでも高く鶏肉を売っていれば、利益が出て、跡取りも見つけることができただろうな、と考えてしまいます。鶏肉を値上げしてくれていたほうが私にとっては幸せだったのです。

※続きの「値下げが中小企業にもたらす5つのリスク(前編)」はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

前セントルイス連銀総裁、FRB議長就任に前向き 利

ワールド

ガザ人道危機「想像を絶する」、日本含む27カ国外相

ビジネス

米7月CPI2.7%、コア加速 関税の影響受けやす

ワールド

トランプ氏、パウエルFRB議長への「大規模訴訟」言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トランプが「顧客リスト」を公開できない理由、元米大統領も関与か
  • 2
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 3
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 4
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 5
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 7
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 8
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 9
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 2
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 5
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中