最新記事

中国経済

中国、巨額の景気刺激策は焦りの表れ

今年のGDP成長率は7%割れも、という予想を覆せるか

2015年1月21日(水)15時15分
アンジェロ・ヤング

綱渡り なりふり構わない財政出動には危険も伴う China Daily-Reuters

 今年のGDP成長率が7%を割り込む恐れがある中国が、1兆1000億ドル規模の景気刺激策を打ち出そうとしている。鉱業や医療など7分野において、数百に上るインフラ事業を推し進めていく構えだ。
 
 この刺激策について中国政府はまだ正式に発表していないが、ブルームバーグが複数の情報筋への取材を基に報じた。「安定した成長を目指す中国政府による施策の1つ。公表されれば市場の信頼を高めるのに役立つだろう」と、英HSBCホールディングスのエコノミスト王然(ワン・ラン)は指摘する。

 習政権ではこれまで、こうした巨額の景気刺激策を講じることを極力控えてきた。財政赤字の悪化につながるからだ。中国政府の負債総額は13年時点のGDP9兆4000億ドルの2倍以上にまでに膨れ上がっている。財政出動による経済活性化から消費主導型の成長に切り替えようとしてきたが、うまくいっていない。

 成長率が7%台を切ると、世界的な金融危機のあおりを受けた09年第2四半期以来の落ち込みとなる。中国政府は、雇用を維持するには最低でも7.2%の成長が必要だとしている。

 政府は昨年1年間のGDP成長率を今月中に発表する予定だ。過去には、政府発表の年間GDPの数値が、各行政区が発表したGDPの合算より低かったために精査されたこともある。地元の景況を実態より良く見せようとして、各行政区が数字をいじったのではないかという疑いが浮上した。

 話を景気刺激策に戻せば、李克強(リー・コーチアン)首相率いる政府は、300のインフラ事業を一気に承認するとみられる。これは、14年から16年までの2年間の長期景気刺激計画の一環でもある。

 案件を個別に承認する従来のやり方を変えることから、中国政府が開発プロジェクトを通じた経済活性化の必要に迫られていることがうかがえる。こうしたプロジェクトは、中央および地方政府、銀行からの借り入れ、国有企業、民間からの資金で賄われるだろう。

 なりふり構わず巨額の財政出動に打って出ようとしている中国。是が非でも「7%割れ」は阻止せねばならない、という焦りが感じられる。

[2015年1月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏に罰金9000ドル、収監も警告 かん口令

ワールド

訂正-米中気候特使、5月にワシントンで会談

ビジネス

ECB、6月利下げ開始の確信強まる インフレ指標受

ビジネス

米インフレは低下、コスト低減へ一段の取り組み必要=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 9

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 10

    日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退──元IM…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中