最新記事

貿易

自動車工場、メキシコへ行く

世界のほぼすべての主要メーカーがメキシコに集結している理由は?

2014年9月9日(火)15時35分
アンジェロ・ヤング

中部グアナフアト州にあるホンダの新工場 Henry Romero-Reuters

 韓国の起亜自動車が10億ドル以上を投じてメキシコに同社初の自動車生産工場を建設する──メキシコ経済にとっては極めて重大なニュースだ。同国のペニャ・ニエト大統領もこの知らせを自ら発表。自動車工場を世界から誘致する決意をあらためて強調した。

「アメリカ工場が生産能力の限界に達した起亜は、最近の自動車業界の流行に乗った。メキシコならアメリカのすぐそばで生産できるし、アメリカよりも多くの自由貿易協定を結んでいるというメリットもある」と、工場用地選定の専門家ディーン・バーバーは言う。

 世界第2の自動車市場と国境を接するメキシコは、カナダ、アメリカ、メキシコが締結したNAFTA(北米自由貿易協定)が94年に発効してからは特に、自動車の生産拠点として理想的な場所になった。最近の調査では、北米を走る自動車5台のうち1台がメキシコ製だ。

 韓国の大手自動車会社が進出すれば、世界のほぼすべての主要メーカーがメキシコに集結することになるだろう。

 人件費の安いメキシコで製造される車は、これまでトラックやSUV、小型セダンなど、高級車に比べて利益率が低い車が主体だった。だが近年は労働者の技術が高まり信頼性が向上したため、高級車の生産も始まろうとしている。

 ダイムラーと日産自動車は中部のアグアスカリエンテス市で高級車生産を始めると6月に発表した。約13億6000万ドルを投じ、共同生産用の工場を造る。17年には日産のインフィニティを、翌年からはメルセデス・ベンツの生産を開始する。ライバルのBMWも直後に10億ドル規模の新工場建設を発表。19年から年間約15万台を生産する予定だ。「メルセデスやBMWが生産するとなれば、もはやメキシコは低価格車専業国とは言われなくなる」と、バーバーは言う。

 11年以降、自動車産業関連の直接投資は約100億ドルに達した。北米市場の裏庭だったばかりでなく、貿易自由化の波に乗った成果だろう。

[2014年9月 9日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、第3四半期は黒字回復 訴訟引当金戻し入れ

ビジネス

JDI、中国安徽省の工場立ち上げで最終契約に至らず

ビジネス

ボルボ・カーズの第3四半期、利益予想上回る 通年見

ビジネス

午後3時のドルは152円前半、「トランプトレード」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと
  • 4
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 5
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「ハリスがバイデンにクーデター」「ライオンのトレ…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中