最新記事

対中ビジネス

中国高官の子女コネ採用の罪

中国で確実に儲けるには権限を持つ高官の子女を雇うこと

2014年6月5日(木)14時34分
マット・スキヤベンザ

コネ採用 組織的に実行していたJPモルガン・チェース Jason Lee-Reuters

 中国における米JPモルガン・チェース銀行の採用慣行をめぐる長い捜査が大きな節目を迎えた。香港の汚職捜査機関が、JPモルガン中国投資銀行部門の方方(ファン・ファン)元CEOを最近、逮捕していたことが明らかになったのだ。方は米証券取引委員会の捜査対象にもなっている。

 方は現在保釈中だが、香港を出ることは禁じられている。JPモルガンが取引上優位になるべく中国高官の子女を採用する「子女プログラム」について、事情聴取を受けるためだ。

 方の逮捕は、現代中国を理解するのに必要な課題を浮き彫りにした。「政治とビジネスの共生関係」だ。

 方の人生自体が、その縮図だ。北京の名門・清華大学を卒業し、01年にJPモルガンに入社、順調に出世を遂げる。一方で彼は中国共産党の指導層に取り入り、中国の政策提言機関である中国人民政治協商会議の委員にも選ばれた。

 方は、単に中国高官の子女を採用するだけでなく、特定の取引に権限やコネを持つ高官の子女を雇っていたようだ。だとすれば、彼が贈収賄に関与していた可能性もある。

 先週のニューヨーク・タイムズ紙によれば、米当局に提出された関係者のメールから、JPモルガンが「子女プログラム」を使えば「儲けにほぼ直結する」と中国人顧客に売り込んでいたことが判明している。

 方逮捕のタイミングは、中国指導部にとって最悪だった。中国は、政府と企業の癒着問題にかつてなく敏感だ。12年には、ブルームバーグとニューヨーク・タイムズがそれぞれ当時の国家副主席習近平(シー・チンピン)と温家宝(ウエン・チアパオ)首相の資産を調査し、彼らが政府の要職にある間に両家がひと財産築いたことを明らかにした。

 習は国家主席就任後、汚職の取り締まりを掲げ、役人が高級時計や派手な宴会などで富を見せびらかすことを禁じた。

 JPモルガン(や他の投資銀行)への今後の捜査の結果がどうあれ、中国のビジネス環境が今もコネの誘惑に満ちていることには変わりがない。

[2014年6月 3日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円

ワールド

スウェーデンのクラーナ、米IPOで最大12億700

ワールド

西側国家のパレスチナ国家承認、「2国家解決」に道=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中