最新記事

エネルギー

中国も追うシェールガスの野望

国を挙げて「シェール大国」への道を突き進む中国。インフラ整備の遅れなど課題は山積しているが

2013年2月19日(火)15時19分
ジェームズ・パーカー

地下深部の宝庫 高度成長を続けるにはエネルギー確保が喫緊の課題だ(写真は米ペンシルバニア州のシェールガス田) Les Stone-Reuters

 ここ数年、未開発の膨大なエネルギー資源として「非在来型」の石油・天然ガスに注目が集まっている。北米では既に地下深部の頁岩(けつがん)層に眠るシェールガス・オイルの開発が始まっているが、中国各地にも頁岩層がある。シェールガスの推定埋蔵量は世界最大だ。

 中国国土資源省は、国内のシェールガスの推定埋蔵量134兆立方メートルのうち約25兆立法メートルが採掘可能とみている。

 中国政府は先日、中部の河南、湖北、湖南、貴州、江西、浙江の各省と直轄市の重慶にある19鉱区の探査権について2回目の入札を行い、16社が落札したと発表した。いずれも中国企業で、うち14社が国有企業、2社が民間企業だ。落札企業は商業生産に向けて合計128億元(約20億ドル)を投資する。

 現状では中国のシェールガス開発にはいくつもの障害が付きまとう。中国のエネルギー政策を策定する国家能源局は昨年、15年に年間65億立方メートルのシェールガスを生産し、20年には年間600億〜1000億立法メートルの生産を目指すと発表した。だが現実にはまだ商業生産も開始されておらず、15年の目標は達成できそうもない。

 中国政府は多額の補助金を交付し、国策として開発を推進する構えだ。救いは有望な鉱区の多くが沿海部の人口密集地に比較的近い所にあること。輸送インフラの建設がさほど大きな負担にならないだろう。

水の確保がネックに?

 それでも中国は、採掘技術と輸送インフラの整備でアメリカとカナダに何年も後れを取っている。英石油大手BPの最近の報告書によると、シェールガスの埋蔵量はアジアのほうが多いが、採掘技術と地上インフラの整備状況から30年まで「北米が生産を支配し続ける」見込みだ。

 例えば、アメリカには210本以上のパイプラインがあり、その全長は約48万キロに及ぶ。それに比べ、中国全土に敷設されたパイプラインは10年段階で全長約3万6000キロ。政府の計画が実現しても、15年時点でようやく全長約10万キロだ。

 中国の開発が本格化するには、ほかにも解決すべき課題がある。貯蔵施設など中・下流インフラの未整備に加え、政府の価格統制も投資意欲をそぐ大きな要因となっている。中国のエネルギー企業は、政府が課す価格の上限と絶えず変動する生産コストの板挟みになり、赤字に転落するリスクを常に抱えている。

 さらにシェールガスの採掘には大量の水が必要だが、鉱区によっては水の確保が難しいことも懸念材料だ。

 一方で楽観材料もある。国家の後ろ盾を得た国有企業が開発の主体であり、少なくとも今のところは資金調達コストが低く、豊富な資金が流入している。こういった楽観材料が、さまざまなデメリットを相殺する可能性もある。

From the-diplomat.com

[2013年2月12日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、米大統領選から撤退表明 「ハリス氏

ワールド

トランプ氏、「ハリス氏のほう負かしやすい」 バイデ

ワールド

トランプ氏、演説で民主党あざける 暗殺未遂後には習

ワールド

イスラエル軍、イエメンのフーシ派拠点空爆 テルアビ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだまだ日本人が知らない 世界のニュース50
特集:まだまだ日本人が知らない 世界のニュース50
2024年7月16日/2024年7月23日号(7/ 9発売)

日本の報道が伝えない世界の仰天事実。世界の今が見えるニュースクイズ50

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 2
    「別人...」ウィル・スミスと一緒に写るジョニー・デップの姿が話題に...33歳年下「新恋人」との写真も
  • 3
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい」と話題に
  • 4
    見落とされがちな「女の子のADHD」15の徴候とは?
  • 5
    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に
  • 6
    メーガン妃の「狂気的なオーラ」が注目を集める...そ…
  • 7
    ロシア防空ミサイルが「ドローン迎撃」に失敗...直後…
  • 8
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 9
    出産間近!ヨルダン・ラジワ皇太子妃が「ロングワンピ…
  • 10
    酔った勢いで彫った「顔のタトゥーは似合わない」...…
  • 1
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい」と話題に
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    出産間近!ヨルダン・ラジワ皇太子妃が「ロングワンピース姿」で公務へ
  • 4
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 5
    トランプが銃撃を語る電話音声が流出「バイデンは親…
  • 6
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
  • 7
    ミサイル迎撃の「劇的瞬間」と祝福の雄叫び...「普段…
  • 8
    AI生成の「ネコ顔の花」に騙される人が続出!? ニ…
  • 9
    「別人...」ウィル・スミスと一緒に写るジョニー・デ…
  • 10
    韓国でLINEユーザーが急増した理由 日本への反発?
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 6
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 7
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
  • 8
    携帯契約での「読み取り義務化」は、マイナンバーカ…
  • 9
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地.…
  • 10
    ルイ王子の「お行儀の悪さ」の原因は「砂糖」だった.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中