最新記事

消費

米自動車市場の急回復は本物か

アメリカ景気の先行きが不透明ななか、トヨタやホンダが3〜4割の販売増を謳歌している理由

2012年10月5日(金)16時15分
ケイトリン・フナロ

日本車復活 米自動車市場の好調を引っ張るのはトヨタをはじめとする外国メーカー Mario Anzuoni-Reuters

 世界経済の停滞が続くなか、アメリカでの自動車販売が急回復している。けん引役はトヨタ自動車やホンダなどの外国メーカー。トヨタは9月のアメリカ新車販売台数が前年同月比41・5%増、ホンダも30・9%の大幅増を記録した(米クライスラーは12%の伸びにとどまった)。

 モルガン・スタンレーの業界アナリストがロイター通信に語ったところでは、アメリカの2012年の自動車販売台数は1480万台に届きそうな勢いだという。これはアナリスト予想の1450台を上回る数字だ。

 増加の要因の一つは、車種によって無利息ローンを借りられるなど、条件のいいローンが増えてきたこと。信用危機が起きて以来、車に寄りつかなかった消費者も、こうしたローンの登場によって購買意欲を見せ始めた。

 信用度の低い消費者も、以前よりローンを借りやすくなってきた。「今はとても低い利息で金が借りられる」とトゥルーカー・ドットコムのアナリスト、ジェシー・トプラックはロイター通信に語った。「中古車の下取り価格もそれほど下がらなくなってきたし、ローンの利息も低いので、自動車メーカーは近年にない魅力的な提案ができるようになった」

ずっと我慢してきた反動?

 長引く不況で深刻な打撃を受けた自動車産業は、安定成長が訪れる兆しを歓迎している。

「ディーラーやメーカーの間では、放っておいても安定した売れ行きが期待できる環境になってきた、という感覚が広がっている。過去数年、業界全体の想像以上の落ち込みに苦しめらえてきた彼らにとって安堵感は大きい」と、エドムンズ・ドットコムのアナリスト、ジェシカ・カルドウェルはロサンゼルス・タイムズ紙に語った。

 しかし別の見方もある。米調査会社ガートナーのアナリストであるシロ・コスロースキーに言わせれば、経済はいまだ脆弱で、現在の成長ムードが長続きしない可能性がある。「今の売上増は、不況で需要が抑えられてきた反動に負うところが大きい」と、彼はタイムズ紙に語った。「ただし今の上昇傾向が今後8カ月続いたら、自動車業界の状況はかなり改善する。メーカーも低迷する世界市場での損失をいくらか補えるだろう」

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中