最新記事

テクノロジー

グーグルのメガネ型端末がもたらす未来

どこでもメール送受信や写真撮影ができる機能を備えたメガネの開発計画を発表したグーグル。画期的なアイデアだが、利用者には思わぬ難点も

2012年4月9日(月)17時55分
ステイシー・リースカ

プライバシーは? 今までも利用者の情報を収集して批判を浴びてきたグーグルだが Darren Staples-Reuters

 どうやらグーグルは本気で未来を変えようとしているらしい。だが、果たしてそれはより良い未来なのだろうか。

 グーグルは先週、メガネ型端末の開発計画「プロジェクト・グラス」を発表した。端末の詳しい仕様は公表されていないが、公開された動画によれば、メガネを装着したユーザーの視界にグーグルのさまざまなサービスが表示されるようだ。道を歩きながらナビ機能や写真撮影、メールの確認やSNS投稿もできる。

 SFの世界のようなプロジェクトだが、実際のところ、このメガネの評価はいかがなものか。

 まずはファッション性をチェック。発表されたのは、近未来的なシルバーのフレームに角ばった形状のデザインだが、ガジェット情報サイト「ギズモード」の評価は辛口だ。「このメガネ、めちゃくちゃオタクっぽい! グーグルはイケてる若手モデルたちを集めて試作品を付けさせてるけど、それでもかなりイケてない。クールなSF映画に出てくるグッズというより、地下の実験室に閉じこもるオタクの愛用品みたいだ」

 これはグーグルにとって、あまり幸先のいいスタートとは言えなさそうだ。では、見てくれはさておき機能のほうはどうだろう。

 グーグルが公開した動画によれば、このメガネをかければ手ぶらでEメールを送受信したり、お気に入りの店を予約したり、友人に電話をかけたり、ビデオチャットをしたり、スケジュールをチェックしたりできる。言ってみれば、顔にiPhoneを付けているようなもの。iPhoneと違うところは、一見すると変人っぽく見えかねないことくらいだ(携帯用ヘッドセットをつけて話している人が、独り言を言っていると勘違いされるのと同じ)。

 まあ、このメガネに250〜600ドルを払おうという時点で、もはや人からどう見られるかなんて気にしないのかもしれないが。

障害のある人にとっては便利だが

 以上、ここまではどれも些細なお笑い草かもしれない。だが、このメガネには深刻な問題が潜んでいる可能性もあるので要注意だ。ユーザーの個人情報が危険にさらされるかもしれない。

「このメガネをかけて街を歩けば、利用者の日常生活に関わる情報をグーグルが今まで以上に集められるようになるかもしれない」と、パソコン情報誌「PCWorld」は指摘している。

「公開された動画からは、このメガネがグーグルのさまざまなサービスと深く結び付いていることがよく分かる。つまり、利用者のあらゆる生活情報をグーグルとシェアするように仕向けているのだ。普段から、グーグルを使う時に表示される広告が自分の興味に合い過ぎていると思っている諸君。そうした広告が絶えずメガネのレンズにちらつく様子を想像するといい」

 もちろん、このメガネには長所だってある。手を使わずに操作できるから、身体に障害がある人はテクノロジーを利用しやすくなるだろう。

 それに、今回発表されたのは最終的な完成品ではない。グーグルは次のような声明を発表した。「現時点でこのプロジェクトを発表したのは、利用者の皆様との対話を通じてご意見をいただき、参考にしたいと思ったからです」

 私たちの声を聞きたいって? もうちょっとマシなデザインで、もうちょっとオタク度を薄め、もうちょっとまともにプライバシーを考えるのだったら協力してもいいけど。  

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、予想外の利上げ 通貨支援へ「先を

ビジネス

超長期中心に日本国債積み増し、利回り1.9%台の3

ビジネス

中国不動産の碧桂園、元建て債3銘柄の初回支払い延期

ビジネス

独IFO業況指数、4月は予想上回り3カ月連続改善 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中