最新記事

SNS

パクリの達人、フェースブック

新機能「スマートリスト」はグーグルプラスのまね? 飽くなき吸収精神こそシリコンバレーの伝統だが

2011年10月19日(水)12時57分
ファハド・マンジュー(スレート誌テクノロジー担当)

節操なし 主義にも理念にもこだわらず、大勢に従ってトップの座を守り続けるザッカーバーグCEO David Paul Morris-Bloomberg/Getty Images

 フェースブックのよく知られたジレンマをどう解消するか。昨年の秋、私は同社のマーク・ザッカーバーグCEOと話をした。

 みんなと同じように親しいわけではないのに、フェースブック上では誰もが「友達」。親友も単なる知り合いも、疎遠な家族も険悪な仲になった同僚も、だ。

 当時、フェースブックはこの悩みを解決する方法を発表したばかりだった。サイト上でスペースを共有するグループ機能だ。高校時代のバンド仲間を集めたグループをつくったら、その参加者はまだグループにいない別のバンドメンバーを招待できる。これなら、友達リストを検索して昔の仲間を1人残らず捜す手間を省ける。

 とはいえこの機能には、突っ込みどころもあった。参加者の1人が、バンドと無関係の嫌われ者を招待してしまったら? ザッカーバーグの答えはこうだった。これこそ、フェースブックで可能な最高の友達分類法だ──。

「アルゴリズム的解決法を採用したとしよう」と、ザッカーバーグは説明した。つまり、ユーザーとその友達のデータを自動的に分析し、誰がどのグループに入るべきかを提案する手法だ。「アルゴリズムに『これがあなたの親友です』と言われて信用できるか? そんなリストを活用したいか? 答えはノーだ。『親友』の意味は人それぞれ違う」

 説得力のある主張だった。コンピューターに人間関係を定義させるなんて、確かにうさんくさい。だからこそ先週、フェースブックが新たな機能「スマートリスト」を発表したときは驚いた。

 新機能はユーザーのデータを分析し、友達リストを「仕事」「学校」「家族」「都市」に自動的に分類する。言い換えれば、1年前にザッカーバーグが否定した「アルゴリズム的解決法」を、フェースブックは採用したのだ。

 若きCEOの心変わりを批判するつもりはない。むしろ、大勢に従うというその決断を褒めるべきだろう。ザッカーバーグが、より良いリストの作成に踏み切った理由は1つ。ほかのみんながそうしていたからだ。

人気のものは何でも吸収

 グーグルが始めたSNS「グーグルプラス」は、フェースブックより簡単に友達の分類ができるというのが基本コンセプト。8月には、フェースブックの友達リストを自動分類するウェブアプリケーション「カタンゴ」が発表され、たちまち大人気になった。

 こうした動きを、フェースブックはもちろん見逃さなかった。かつての疑念はどこへやら、ザッカーバーグはライバルたちのアイデアを即座に取り込んでみせた。

 これこそ、フェースブックの最大の強みだ。ザッカーバーグとその部下は他社の最高のアイデアを自在に、厚顔無恥に、そして極めて巧みにコピーする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中