最新記事

世界経済

ブラジルはユーロ危機の救世主?

債務危機に揺れるEUへの支援を表明したが、自国経済は失速、ロシア、中国、インドも無言のまま

2011年10月5日(水)16時47分
サラ・チルドレス

南米からの忠告 財政再建ばかりでなく成長と雇用創出を促進すべきだとEUに語ったルセフ(10月4日、ブリュッセル) Yves Herman-Reuters

 ブラジルは巨額の債務危機に瀕しているEU(欧州連合)に助け舟を出すつもりらしい。世界経済におけるブラジルの地位を強化する狙いだ。

 ブラジル初の女性大統領ディルマ・ルセフは、ブリュッセルで開かれたEU=ブラジル首脳会談の場でEU支援を約束した。ブラジルには世界経済における役割を「果たす心づもりがある」と、ルセフ。「私たちを当てにしてほしい」

 ルセフは以前から、ブラジルをはじめとするBRICS諸国にはヨーロッパを危機から救う力があると語っていた。だが今のところ、他のBRICS諸国であるロシア、インド、中国、南アフリカから同調する声は聞かれない。

 ルセフはまたEU諸国に対し、これまでのように緊縮財政ばかりに注力するのではなく、経済成長と雇用の創出を促進していくべきだと助言した。「景気に悪い財政調整だけしていてはだめだ」と。

 ブラジルが、どんな支援を申し出るのかはまだ分からない。しかもルセフが景気よく約束した一方で、ブラジル経済は失速しつつある。世界経済の低迷と政府による歳出削減を受け、ブラジルの中央銀行は今年の経済成長率を4%から3.5%に下方修正した。ちなみに昨年のブラジルの成長率は7.5%だった。

 ここしばらく、ブラジル経済の過熱を懸念する見方が広がっている。とはいえ、破滅への道を進んでいるわけではない。少しだけ成長のペースを落としただけた。

 英フィナンシャルタイムズ紙はブラジル経済の動向について、ゴールドマンサックスのエコノミスト、アルベルト・ラモスの言葉を引用している。「ブラジルは地球の重力から逃れることはできない。彼らもグローバル経済の一部なのだから」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス、60日間の一時停戦案を承認 人質・囚人交換

ワールド

米ウクライナ首脳会談開始、安全保証巡り協議へとトラ

ワールド

ロシア、ウクライナへのNATO軍派遣を拒否=外務省

ビジネス

トランプ政権、インテル株10%取得巡り協議中と報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する現実とMetaのルカンらが示す6つの原則【note限定公開記事】
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 8
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 9
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中