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経済活力

イギリス経済が死ななかった理由

2010年11月10日(水)15時02分
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局)

意外に強力な製造部門

 しかも世界6位の規模の英経済は、金融危機後に批判されたほどシティーへの依存度は高くなかった。金融サービスは好景気に多大な貢献をしたものの、経済全体の規模の10分の1を大きく超えたことはなかった。

 他の欧州諸国と同じくイギリスの製造業も斜陽気味とはいえ、それでも世界6位の製造業大国。国内経済に占める製造業の割合は13%で、アメリカやフランスと同程度だ。この事実がさほど目立たないのは、多くの人の目に触れやすい消費者向けのブランドより航空宇宙産業や製薬業を強みとしているからだろう。

 喜ばしいことにイギリスは、市場の気まぐれや勘違いに振り回される度合いが多くの国より小さい。高コストの短期国債への依存度が低いからだ。英国債の償還期間は平均13年で、ドイツやアメリカの倍以上。これも、エコノミストの意見に一喜一憂せずに済む理由の1つだ。

 イギリスは目の前に深刻な問題を抱えてはいるものの、もう「おしまい」だと言われるような国ではない。

[2010年10月 6日号掲載]

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