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アメリカ経済

オバマ「輸出倍増」計画は茶番だ

2010年3月15日(月)18時12分
ダニエル・ドレズナー(米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院教授)

 G20の枠組みの中で、世界経済の回復と成長を引き続き目指していきます。昨年、世界の20の国と地域が集まって世界金融危機への対応を話し合ったとき、それぞれの国がバランスの取れた経済を築く必要があることで意見が一致しました。

 アメリカはあまりに長い間、世界全体の消費の牽引役を務めてきました。しかし、今はもっとバランスの取れた経済に転換しつつあります。私たちは、以前より貯蓄をするようになりました。同じように、世界のすべての国が経済のバランスを取るべきです。

 貿易赤字を抱えている国は、もっと貯蓄に励み、輸出を増やす必要があります。貿易黒字を抱えている国は、もっと消費を増やし、内需を振興する必要があります。世界レベルで経済のバランスを取る上で、中国が為替レートをもっと市場原理に委ねることは避けて通れません。


 この分野で具体的な政策が提案されれば、私はこんな斜に構えた記事を書くのをやめにする。ここでオバマが述べているとおりのことが実現すれば、アメリカの輸出は大きく増えるはずだ。しかし演説の中には、この一節以上に踏み込んだ内容はない。

 この演説は、具体性を欠く上っ面の主張が並んでいるだけだ。どの項目をとってみても、輸出を増やす上で目に見える効果はない。

 国家輸出戦略の最大の効用は、オバマ政権が言い訳の材料を手にできたことだ。輸出振興のために何もやっていないとか、保護貿易主義に走っていると批判を受けたとき、ホワイトハウスは「ちゃんとやっている」と反論できる材料をとりあえず手にした。しかし、そうした政治的アリバイづくり以上の意味はほとんどない。

[米国東部時間2010年03月12日(金)15時15分更新]

Reprinted with permission from Daniel W. Drezner's blog, 12/03/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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