最新記事

テクノロジー

iPadの真価はアプリ開発者に聞け!

発売前から「大失敗」「大成功」と評価が真っ二つのiPadだが、テクノロジー進化の「大きな一歩」になる予感が

2010年3月29日(月)17時38分
ケビン・ケラハー(テクノロジーライター)

実力はいかに 発売前から騒がれるiPadはコンピューターの未来を変える? Kimberly White-Reuters

 数週間のうちに、「甚だしい失敗」から「見事な成功」へ――iPadの変身ぶりを考えるとおかしなものだ。それも、すべて発売前の評価なのだから。

 専門家は当初、iPadはホルモン分泌に異常をきたしたiPhoneに過ぎないと切り捨てた。先行予約がスタートしても、予約数は思ったほどではなかったようだ。やがてアナリストらは、好調な売り上げを基にしてアップル社の収益予測を上方修正し始めた。そして今週、iPadは再びメディア産業の救世主として扱われている。

 評価が両極端に揺れても、当然のことながら真実はその間にある。1月にスティーブ・ジョブスCEO(最高経営責任者)が発売を発表した直後から、iPadが大きな可能性を秘めていることは明らかだった。ただその可能性は、アプリケーションの開発会社によって左右されるだろう。そのため開発会社がiPadをどう評価しているかが、最良の判断基準になる。

 USAトゥデー紙はアプリケーション開発会社の幹部数名に話を聞いている。彼らはどんなアプリケーションが開発できそうかを見定めたり、初期購入者の注目を勝ち取るために、iPadの足掛かりを早くつかもうと競っている。同紙によれば発売日の4月3日、店頭に列をなす人々の中には開発会社の人間も多く混じっていそうだ。

 USAトゥデーの記事からコメントをいくつか抜粋してみよう。


■ネットラジオ局パンドラのティム・ウェスターグレンCSO(最高戦略責任者)  「私の直感では、この手の機器は実際に手にとって、使ってみないと理解できないものだ......出版市場を元気づける電子ブックリーダー以上のものになると思う。人々が普通に使うコンピューターだ」

■iPhoneの人気音楽ゲーム、タップ・タップ・リベンジを開発したタピュラスのバート・デクレムCEO
 「リビングルームに進出するiPhoneのようなものだ......短期的に見れば、iPhoneの延長線上にある存在。長期的に見れば、ゲーム機やノートパソコンに取って代わる最新のハードウェアになるだろう」

■iPhoneのメッセージアプリケーション、テキスト・プラスを開発したゴージーのスコット・レーマンCEO
 「どこかで『土地の奪い合い』が起きるとすれば、それはiPadだ」


「土地の奪い合い」で得られるものにはリスクが伴う。何より大きなリスクはインタラクティブで没入型で、ポケットサイズではないこの機器が何に使われるのかはっきりしないこと。ゲーム? 仕事? 娯楽? まだ宙ぶらりんだ。

 アメリカのソフト会社サイベースが消費者を対象に、iPadのようなタブレット型パソコンを何のために使用するかを調査したところ、仕事の生産性のため(52%)という答えが一番多かった。ビデオ(48%)やゲーム(35%)はそれぞれ2位、3位だった。

 インフォメーションウィーク誌もさまざまなiPad用アプリケーションの開発会社に話を聞いている。もちろん広告会社も、iPad利用者に向けて独創的な広告戦略を展開しようとしている

 結局は否定論者が正しくて、iPadが失敗に終わったらどうなるのか? 図表作成ソフトのメーカー、オムニのケン・ケースCEOは、オンライン雑誌アルス・テクニカに対してこう語っている。

 「iPadが成功するかどうかに関わらず、これからはマルチタッチの時代だ......5〜10年のうちにiMacか何かで、本当に大きなマルチタッチスクリーンが出て来るだろう。クリックやドラッグではなく、画面に触れて動作させるようになる......この努力(iPad)は未来への投資だ。われわれはまったく違った視点からiPadやマックのアプリケーションを見て、操作環境の変化に合わせてアプリケーションを改良していかなくてはならないだろう」

 インターネットのコンテンツが進化するのを私たちは目の当たりにしているが、さらに大きな飛躍がiPadとともに始まると私は確信している。アプリケーションを開発する人々の胸の高なりが、何よりの証拠だ。

*The Big Money特約
http://www.thebigmoney.com/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、予想外の3.2万人減 23年以来

ワールド

ハマス、米調停案の検討3日目に 赤十字がガザでの活

ワールド

EU首脳「ドローンの壁」協議、ロシアの領空侵犯に対

ビジネス

9月米ISM製造業景気指数は49.1、7カ月連続で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」してしまったインコの動画にSNSは「爆笑の嵐」
  • 3
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引き締まった二の腕を手に入れる方法
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かっ…
  • 8
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 9
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 10
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 4
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 7
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 8
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 9
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 10
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中