最新記事

パソコン

ジョブズ不在でアップル怠慢?

アップルの最新OS「スノーレパード」は不具合だらけ

2009年11月24日(火)15時39分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 スティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)が極秘に肝臓移植手術を受け、不在だった6カ月間、アップル社はいつもどおりですべてがうまくいっていた。これが世間の一般常識だった。だが、同社が8月末に発売したOS(基本ソフト)の最新版「スノーレパード」に関するパッとしない評価報告を読んで、私は本当にそうかと疑念を抱き始めた。

 複数の報告書によると、スノーレパードには一般ユーザーに分かるほどの改良点が見当たらない。その代わりに加わったのが、多くの異常や不具合だ。いくつかのドライバは作動さえしない。他社製のアプリケーションのなかには、スノーレパード用に書き換えないと機能しないものもある。

 アップルはこれらの問題をソフト開発業者と共に解決していく方針なので、マイクロソフト社がウィンドウズ・ビスタを開発したときのようなバッシングは回避できるだろう。それにアップルのファンのほうが、欠陥も大目に見がちだ。

 だが完璧主義の独裁者として名高いジョブズがいない間、部下たちが少々だらけてしまったのではないかと思わずにはいられない。一体なぜ、このような製品が世に出ることになったのか。スノーレパードは人生が変わるような革新的技術で感動させてくれるわけでもなく、ちゃんと動いてくれさえしない。はっきり言って、とても「アップルらしくない」のだ。

 もちろん、スノーレパードは前身の「レパード」よりも高速だ。ハードディスクドライブ内に占める容量も縮小された。現在出荷中のすべてのマッキントッシュには、スノーレパードが搭載されている。

悪いレビューには法的圧力も

 マイクロソフトも、もうすぐウィンドウズOSの最新版「ウィンドウズ7」を出荷する。正式発売は10月だが、ここ数カ月間は誰でも無料でベータ版のダウンロードが可能だった。私も1月から数台のコンピューターで使用してきたが、これがすごい。安定していて、速くて不備がない。ウィンドウズ7は出荷される頃には、何百万人ものユーザーのテストを受けたことになる。

 一方、セキュリティーと機密に異常なほど敏感なアップルは先月、スノーレパードの「第一印象」に関するレビューを掲載したイギリスのウェブサイトに法的な圧力をかけた。

 アップルの最新OSがひどい前評判どおりのものなのか、実際はもっと良いものなのかはまだ分からない。だがスノーレパードとウィンドウズ7の格差は、レパードとウィンドウズ・ビスタほどには広がらないだろう。

 なぜなら一見すると大きな変化がみられないスノーレパードも、具体的な中身には変化があるからだ。例えば、新しいコンピューターチップを生かしたソフトウエアによって、同時に複数の処理ができるようになった(いわゆるパラレルプロセッシングだ)。またソフト開発者が、メインプロセッサーとは別に動く画像プロセッサーを利用して、プログラム作成を行うことも可能になった。この2つの特徴によって、より高速で作動するアプリケーションの開発が可能になるだろう。

 愛用しているのがマックでもウィンドウズでも、または私のように両方でも、今年末までには昨年より良いOSが使えるようになるのはうれしいことだ。たとえスノーレパードが、ジョブズの厳しい基準を満たしていないとしても。

[2009年10月28日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メラニア夫人、プーチン氏に書簡 子ども連れ去りに言

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同

ワールド

ウクライナ大統領18日訪米へ、うまくいけばプーチン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中