最新記事

アメリカ経済

サプリ業界が不況期に伸びる3つの理由

小売り業の苦戦が続くなかでサプリメントが売れまくっている背景には、「あの問題」もありそうだ

2009年11月2日(月)17時25分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

意外な勝ち組 アメリカのサプリメント業界は不景気を追い風に急成長している

 10月29日、米政府は第3四半期のGDP(国内総生産)速報値を発表し、経済が急速に回復していると宣言した。となると、いよいよ勝ち組が誰かを見極めるタイミングだ。

 私はこの数カ月間、マクドナルドや銃器メーカーのフリーダム・グループのように不況のなかで見事な成功を収める企業に注目してきた。同じように、不景気の時代にぴったりのビジネスモデルで成功を収めた業種がもうひとつある。ビタミン剤やサプリメントを取り扱う企業だ。

 新規株式公開(IPO)の市場を見ると、旬のビジネスが何かよくわかる。不況に突入して以来、小売業はずっと冷え込んできた。ウォールストリート・ジャーナル紙のリン・コワンによれば、小売業で上場を果たしたのは2年近く前のランバー・リクイデーターズが最後。だが、そんな冬の時代は先週で終わった。

 変化の急先鋒は、サプリメント販売のチェーン店であるビタミン・ショップ。1970年代にニューヨークにオープンさせた一店舗からスタートし、今では434店舗をもつ同社は、7月にIPOを申請。10月27日に上場を果たし、1億5000万ドルを集めた。

医療保険に入れないからサプリを飲む?

 ビタミンやミネラルをはじめとするサプリメント市場は250億ドル。この業界は、3つの点で昨今の経済危機の恩恵をこうむっている。

 まず、社会学者のリチャード・フロリダが「大きなリセット」と呼ぶように、一部のアメリカ人の間で健康ブームが高まっていること。彼らは体に悪い習慣や金のかかる食生活を改め、タバコや炭酸飲料を減らし、スターバックスやコンビニエンスストアで高カロリーのおやつを買うのを控えている。ビタミン剤やサプリメントは、健康なライフスタイルに欠かせない要素だ。

 2つ目の要因は、医療保険に入れないアメリカ人が増えていること。彼らは処方薬や医療行為に多額の支払いを迫られるリスクをかかえており、サプリメントで穴埋めしようとしているのかもしれない。大手小売チェーンのウォルマートやウォルグリーンでも、サプリメントの売れ行きは好調だ。

 さらに、史上最強の消費勢力であるベビーブーマー世代も、サプリメント業界の快進撃を後押ししている。もともとナルシスト的な傾向がある彼らは、高齢化するにつれて今まで以上に健康に執着している。

 60年代のマリファナブームや70年代のディスコブームを起こしたのと同じように、彼らはいまサプリメントの売上アップを牽引している(ある高齢のベビーブーマーの知人の手元には常に錠剤が並んでおり、私は彼を訪ねるたびにサプリメントチェーンのGNCに押し入ったのかと質問するほどだ)。

 ニュートリション・ビジネス・ジャーナル誌によれば、サプリメントの売上は2001~08年にかけて年4.9%のペースで増えた。「業界を引っ張る重要な要素の一つは、ベビーブーマー世代を含む50歳以上の人々の存在だ。彼らはより健康な自分を求めて病気の治療や予防に努めている」と、ビタミン・ショップのパンフレットにも書かれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院、トランプ氏の対イラン戦争権限制限案を否決 

ビジネス

米経済活動、7地区で緩やかな拡大 見通しは全体に楽

ワールド

トランプ氏、FRB次期議長にウォーシュ氏正式指名 

ワールド

米国防総省、重要鉱物の国内供給強化へ提案要請 イラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中