最新記事

テクノロジー

プリウスは時代に取り残される?

ハイブリッド車の主流は「プラグイン」方式に移行している

2009年6月23日(火)15時05分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 ほとんどの人がトヨタのおしゃれなハイブリッド車「プリウス」を、今も流行の最先端で、最新かつ最高の技術だと思っている。しかしアメリカでの発売開始から約10年、この車は時代遅れとも言われ始めている。「ハイブリッドは過去の技術だ」と、サンフランシスコ市長でカリフォルニア州知事選に立候補を表明しているギャビン・ニューサムは言う。

 ニューサムの場合、地元に電気自動車メーカーを誘致するという政治的思惑がある。テスラロードスターのテスラモーターズや、環境に優しい交通を追求する新興企業ベタープレイスが既にベイエリアを拠点としている。

 だが彼の発言にも一理ある。新世代のメーカーは従来のハイブリッド車を敬遠し、バッテリーの電力だけで走行する「プラグインハイブリッド」を採用しているのだ。

 自動車業界は新技術の急激な波に混乱している。「業界は1度も経験したことのないような技術革新の始まりに立っている」と、世界最大のオンライン自動車販売会社オートネーションのマイク・ジャクソンCEO(最高経営責任者)は言う。「今後5~10年は、過去100年より多くの変化があるだろう」

プリウス式は「意味がない」

 急激な変化の最初の犠牲者は、プリウス式のハイブリッドかもしれな い。「従来のハイブリッドはガソリンエンジンからプラグインに移行する過渡期の解決策だ」と、フィスカー・オートモーティブの創設者でCEOのヘンリック・フィスカーは言う。同社のスポーツセダン「カーマ」はプラグイン車だ。

 フィスカーに言わせれば、プリウス式のハイブリッドは「かなり複雑で」「意味がない」。現行のプリウスは米国基準でガソリン1ガロン当たり平均46マイル(1リットル当たり約19.6キロ)走るが、フィスカーによるとカーマは平均100マイル(約42.5キロ)。1度に80キロ以上の遠出が少なければ燃費はさらに向上する。

 これは従来のハイブリッド車が、ガソリンエンジンと電気モーターを併用して走行するからだ。プラグイン車は電気モーターだけで走行し、ガソリンエンジンはバッテリーを充電するための電力を生成するだけ。バッテリーの容量(走行距離で約80キロ)以上の連続走行をしなければガソリンエンジンは始動しない。ガソリンをまったく使わずに走り続けるプラグイン車も理論上はあり得る。

 ゼネラル・モーターズ(GM)が11年に発売予定の「シボレーボルト」と、クライスラーが13年に発売予定のモデルは、プラグイン車だが両社とも「走行距離が延びた電気自動車」と呼んでいる。従来型のハイブリッド車についてクライスラーは開発を発表していない。製造しているフォードとGMも、総販売台数に占める割合はごく僅かだ。

 自動車の概念をより劇的に再考するメーカーもいる。ベタープレイスは(ガソリンエンジンのない)完全な電気自動車の蓄電量が減ったら、フル充電したバッテリーごと換える「交換ステーション」を構想している。

ガソリン価格との微妙な関係

 新参者に時代遅れと言われ、トヨタは少々いら立っている。「(北米での)発売から約10年。これは古いとか時代遅れという意味ではない。プリウスは進歩し続けている」と、同社の北米の広報担当ジョン・ハンソンは語る。今年発売される新型モデルは燃費が米国基準で1ガロン当たり平均50マイル(1リットル当たり約21.3キロ)を超えるという。

 プリウスで最も旧式なのはニッケル水素電池だ。新世代の完全電気自動車とプラグイン車は、リチウムイオン電池を使っている。

 トヨタもリチウムイオン電池を研究中で、来年にはプラグイン車の販売を計画していると、ハンソンは言う。ただし現段階では実証済みのバッテリーが最適で、リチウムイオン電池の技術は成熟していないとも強調する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米潜水艦がイラン軍艦を魚雷で撃沈、87人死亡 スリ

ワールド

イラン、米CIAに停戦に向けた対話の用意示唆=報道

ビジネス

ミランFRB理事、年内利下げ継続を主張 「イラン攻

ビジネス

金利据え置きを支持、インフレ見通しはなお強め=米ク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 8
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中