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NYタイムズ「非営利化」狙う投資家

ハリウッドの重鎮で天才的な投資家デービッド・ゲフィンが、絶滅寸前の新聞業界に目をつけた意外な理由

2009年5月14日(木)19時18分
ジョニー・ロバーツ

アメリカの宝 名門紙ニューヨーク・タイムズも広告と読者をネットに奪われて経営難に Gary Hershorn-Reuters

 66歳のデービッド・ゲフィンは、推定45億ドルの資産をもち、フォーブス誌の世界長者番付にランクインする大富豪だ。

 ハリウッドの重鎮で投資の天才でもあるゲフィンは、アートと投資の世界で巨額の富を稼ぎ出してきた。

 もっとも、ゲフィンの富の基盤は今もメディア業界にある。ジョニ・ミッチェルやイーグルスの名曲をプロデュースし、スティーブン・スピルバーグらと共同で映画会社ドリームワークスSKGを立ち上げるなど、ゲフィンはメディア業界で輝かしい業績を積み重ねてきた。

 そのゲフィンが、今度はニューヨーク・タイムズ紙に目をつけた。2年前にはロサンゼルス・タイムズ紙の買収に失敗しているというのに、絶滅寸前といわれる新聞業界を自身のポートフォリオに組み込もうと躍起になっているのはなぜか。

 同紙の発行元で経営難に陥っているニューヨーク・タイムズ社の株式取得を提案したという報道について、ゲフィン自身は公にコメントしていない。だが彼に近い2人の関係者に言わせれば、答えはシンプルだ。

生き残るには非営利化がベスト

 ゲフィンはニューヨーク・タイムズを非営利組織に転換しようと目論んでいる、と情報筋の1人は明かす。ゲフィンにとって、世界有数の影響力をもつニューヨーク・タイムズはアメリカの宝であり、永久に保存すべき存在なのだ。

 モデルとなるのは、非営利団体のポインター・メディア学協会が運営するフロリダ州の地元紙セントピーターズバーグ・タイムズだ。「デービッドはニューヨーク・タイムズが利益を上げることを望んでいるが、配当金の支払いや利潤追求に縛られずに経営できることがベストだと考えている」と、情報筋の一人は語った。

 本誌が取材した2人の情報筋は、ゲフィンの投資決定プロセスや今回のニューヨーク・タイムズ株の取得提案に詳しい人物だが、匿名を希望している。「ニューヨーク・タイムズは特殊な組織だ」と、情報筋の1人は言う。「存続することが重要だ。デービッドは、そのためには非営利という形態がふさわしいと考えている」

 新聞業界の例にもれず、ニューヨーク・タイムズ紙も財政面、技術面、読者のニーズの面で苦境に立たされている。読者も広告主も紙媒体を捨て、世界中どこからでも無料で読めるネット上のニュース媒体に流れている。

 新聞は「損失を果てしなく出し続ける可能性がある」と、伝説的な投資家ウォーレン・バフェットは先日言った。「いくらであろうと買う気はない」

 ニューヨーク・タイムズは広告と発行部数の急激な減少や巨額の負債のため、何カ月も前から経営危機に陥っている。そのためゲフィンの提案とは別に、非営利への移行を検討していた。

「だが、非営利化は当初思ったよりも複雑な問題をはらんでいる」と、同社のスコット・ヒーキン・カネディ社長は先週、オンラインでの読者の質問に答えて言った。
「さまざまな理由から(非営利化の選択肢は)当面はない」。本誌の取材に対して、同社の広報担当者は「社内の問題だ」として、それ以上のコメントを避けた。

 ゲフィンが同社を従来のような投資対象として見ていないことから、アーサー・サルツバーガーJr.をはじめとする経営幹部にあらかじめアプローチしたと予想される。サルツバーガーは同社会長であり、113年間にわたって同社を支配してきたサルツバーガー・オックス家の中心人物だ。

株式取得に失敗してもあきらめない

 ゲフィンのニューヨーク・タイムズ買収計画を、匿名の情報源の話として最初に報じたのはフォーチュン誌だ。それによると、ゲフィンはハービンジャー・キャピタル・パートナーズ(同社に最初に敵対的買収を仕掛けたヘッジファンド)が保有する20%近い株式を取得しようとして失敗したという。

 ハービンジャーとの交渉はすでに終わっているが、ゲフィンは今もニューヨーク・タイムズに興味を持ち続けているとされる。

 ゲフィンが同社を手に入れたとしても、どうやって非営利組織に転換するのかはっきりしない。3月にはベン・カーディン上院議員(メリーランド州)が、新聞社を非営利団体に転換しやすくする法案を提出した。

 ゲフィンは、セントピーターズバーグ・タイムズの経営者であり、ジャーナリズム界で独立主義を貫いたことで有名なネルソン・ポインターを自らに重ねていると、ゲフィンの関係者は本誌に語った。セントピーターズバーグ・タイムズは非営利団体の手本として広く知られており、存亡の危機に直面している新聞業界から注目を集めて
いる。

 1978年に亡くなったポインターは、新聞の独立性と地元密着の経営を維持するには非営利という形態がベストだと考え、新聞社とポインター・メディア学協会の運営に熱心に取り組んだ。

 現在、所有権が複雑に入り組んだセントピーターズバーグ・タイムズ紙は、多くの点で営利企業に近い形で運営されている。4月には、2度目のピュリツァー賞を受賞。それを上回るのは、5回受賞のニューヨーク・タイムズだけだ。

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