最新記事

SNS全盛でシリコンバレーが失ったもの

フェースブック
過去か未来か

打倒グーグルの最有力候補は
会員5億人の「お友達帝国」

2011.01.12

ニューストピックス

SNS全盛でシリコンバレーが失ったもの

一攫千金の技術ではアメリカのモノ作りは没落する。リアルな価値を生み出す投資をもっと増やすべきだ

2011年1月12日(水)17時00分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)最大手のフェースブックが怒っている。なぜか。10月1日にアメリカで公開された映画『ソーシャル・ネットワーク』が、同社誕生の経緯を好き勝手にねじ曲げているからだ。

まあ、ご立腹はもっともだ。それでも私は、この映画を面白いと思う。確かに物語のほとんどはフィクションだが、今のシリコンバレーに蔓延する「一獲千金」願望と、それで成功してきた人たち(フェースブックの創業者で26歳のマーク・ザッカーバーグもその1人)について、かなりの真実を伝えているからだ。

 かつてのシリコンバレーをリードしていたのは、物理学博士で集積回路の発明に携わり、インテル設立に参加したロバート・ノイスのような科学者やエンジニアだった。当時のシリコンバレーでは誰もが物理学や電子工学といったハードな科学に取り組み、モノづくりに励んでいた。だからこそ半導体(シリコンバレーという名の由来だ)が生まれ、パソコンや各種のソフトウエアが生まれた。

古参インテルやアップルとの違い

 しかし、今のシリコンバレーはカジノだ。頭のいい若者たちがやって来て会社を立ち上げるのは、手っ取り早く大金を稼ぐため。たいていの会社は(無意味とは言わないまでも)まともなモノづくりとは無縁で、古参のヒューレット・パッカードやインテル、アップルなどとは似ても似つかない。

 今のシリコンバレーで最も熱い企業は、フェースブックにツイッター、そしてジンガだ。では、彼らはいったい何をしているのか。

 フェースブックを使えば、友達と連絡を取り合うことができる。なかなか深遠なサービスだが、全世界5億人のユーザーに一斉に広告を流す仕組みのおかげで、同社の今年度の収益は約15億ドルに上る見込みだ。

 ツイッターは、その多くのユーザーに暇つぶしとセレブのつぶやきウオッチングの楽しみを提供している。会社自体は今も利益を出すのに四苦八苦しているが、それでもツイッター用の小さなアプリケーションを開発する多数の企業には資金が流れ込んでいる。

 その1つがジンガだ。フェースブック用のアプリ開発業者としては最大の規模を誇り、「ファームビル」や「マフィアウォーズ」といったちゃちなゲームで人気を博している。そうしたゲーム内で使うバーチャルグッズの売り上げが好調で、今年度の収益は5億ドルに上りそうだとか。

 何か大切なものが失われてしまったのではないか。ベテラン技術者の間からは、そんな声が聞こえてくる。「昔のシリコンバレーでは、みんなが真に困難な問題の解決に挑み、自分の技術に賭けていた」と言うのは、マイクロソフトの最高技術責任者だったネーサン・ミアボルド。「(しかし今は)人まねと金儲けだけの人が多過ぎ、本当に大事な問題に取り組む人が足りない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正-米、イランのフーシ派支援に警告 国防長官「結

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中