最新記事

ハネムーンで学んだ味噌造りの極意

続 ニッポン大好き!

味噌、ネイル、短歌、神道とロボット
「和」の凄さは外国人の匠に聞け!

2010.08.06

ニューストピックス

ハネムーンで学んだ味噌造りの極意

ジョン&ジャン・ベラミ(「アメリカ・ミソ」創業者、日本食コンサルタント)

2010年8月6日(金)12時04分
コリン・ジョイス

本物の探求 ベラミ夫妻は結婚直後の79年に来日し味噌造りを学んだ、修行当時のジョン(右) Mike Belleme(left), Courtesy of John Belleme

 ジョン・ベラミが「世界で最も汎用性が高く薬効もある食品の一つ」と考える味噌に出合ったのは、70年代半ばのこと。ヘビースモーカーだった彼は、自然食品店を営む友人に味噌をすすめられた。「味噌汁を飲むようになってから肺機能が回復し、エネルギーが満ちていくのを感じた」とジョンは言う。

 味噌信奉者になったジョンは、思い切った行動に出た。79年、結婚したばかりの妻ジャンとともに、味噌造りを学びに日本へ向かったのだ。当時のアメリカでも味噌を入手することはできた。だがそれは大量生産の殺菌されたもので、「自然の温度と湿度を利用した伝統製法の味とは比べようもなかった」とジョンは言う。

 味噌はおろか日本食への関心さえ低い時代。しかも2人は日本語を話せなかった。「周囲は無謀だと考えた」とジョンは話すが、彼には適性があった。生物学の研究者として働いていたため、微生物が作用する発酵食品の仕組みは比較的理解しやすかったのだ。

 栃木県の小野崎糀店で8カ月間にわたって働いた2人は帰国後すぐ、温度や湿度が味噌造りに適したノースカロライナ州にアメリカ・ミソ社を設立。初年に年36トンだった生産量は、自然食品人気の高まりとともに年400トンまで増えた。経営権を手放した今も、コンサルタントとして同社にかかわる。これまでにレシピ集も5冊出版した。

 しょうゆほどではないが、味噌はアメリカの食卓に浸透している。「ベジタリアンが味噌の肉っぽい味を生かしてチリやグレービー(ソース)に使ったり、乳製品を食べられない人が野菜スープに混ぜたりしている」とジョンは言う。

 味噌風味のライスクリスピーのような型破りな商品を作る会社も現れたが、2人は気にしていない。30年近くにわたって愛してきた食品をより多くの人々に知ってもらうことを、彼らは願っている。

[2008年10月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中