最新記事

タリバン8年間の真実

編集者が選ぶ2009ベスト記事

ブッシュ隠居生活ルポから
タリバン独白まで超厳選

2009.12.15

ニューストピックス

タリバン8年間の真実

「人間の肉声ほどニュースを身近に感じさせてくれるものはない。この記事を読むと、9.11テロ以後のアフガニスタンとタリバンが2次元ではなく3次元の存在としてしっかり心に刻まれる。そして、彼らのことをもっと知りたいと思えてくる」(本誌・大橋希)

2009年12月15日(火)12時06分
サミ・ユサフザイ(イスラマバード支局)、ロン・モロー(イスラマバード支局長)

「聖戦士の生の声から浮かび上がるのは、自分たちの土地を守ることがタリバンの目的であること、アルカイダの影響力がかなり落ちていること、アメリカのテロとの戦いが的外れだということ。米軍増派で攻撃が激化すれば、タリバンの力も自然に大きくなることをアメリカは知るべきだと、記事は物語っている」(本誌・山田敏弘)

「まさしくタリバン側からの生の声を聞ける貴重な記事」(本誌・川崎寿子)


「アメリカの敵」であるタリバン関係者6人が本誌だけに語った恐怖と希望と闘志

戦争の間は----いや、戦争が終わった後もそうだが----敵が本当に何を考えているのかを聞く機会はほとんどない。

 情報戦のなかではプロパガンダが飛び交い、指導者たちは真実をねじ曲げて語りがちだ。敵側の真実を伝えるはずのジャーナリストが拉致されたり、殺害されたりする場合もある。こうして敵の一般の兵士たちの恐怖や希望は、戦場を遠く離れた場所で作成される統計や理論の中にしばしば埋もれてしまう。

 アメリカがアフガニスタンで戦っている戦争も例外でない。イスラム原理主義武装勢力タリバンの戦闘員や指揮官の声は、アメリカにほとんど届いていない。しかし戦いが(想定以上に)長引くなかで、アメリカとその同盟国は、敵がどういう人たちで、なぜ戦い続けるのかを知っておくべきだろう。

 アフガニスタンで戦いが始まったのは8年前の10月。01年の9・11テロの後、その首謀者とされるウサマ・ビンラディン率いる国際テロ組織アルカイダをかくまっているとして、当時のブッシュ米政権が同盟国と共にアフガニスタンへの攻撃を開始。程なくタリバンの政権を崩壊させた。しかしその後、タリバンは勢力を盛り返し、駐留アメリカ軍やアフガニスタン政府を悩ませ続けている。

 この特集では、現地のタリバンの肉声を通じて、「アメリカの敵」の側から見たこの8年間を浮かび上がらせる。1カ月にわたりアフガニスタンとパキスタンの国境地帯を飛び回って取材に当たったのは、01年以来、本誌のためにアフガニスタン情勢を取材し続けているサミ・ユサフザイ記者。ユサフザイは取材を通じて、多くのタリバン関係者とのパイプを維持してきた。ここで取り上げた6人はすべて、これまでの経験上、発言におおむね信憑性があると見なせる人物ばかりである。

 もちろん、すべての発言内容の裏付けを取ることは不可能だ。それでも、以下で紹介する6人のタリバンの証言は、9.11テロに始まりタリバン政権の崩壊と復活に至る8年間のアフガニスタン戦争を別の角度から見る貴重な資料になるはずだ。          


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中