最新記事

『マルコヴィッチの穴』

シネマ!シネマ!
シネマ!

あの名作、話題作を
辛口レビューで斬る
増刊「映画ザ・ベスト300」
7月29日発売!

2009.08.03

ニューストピックス

『マルコヴィッチの穴』

あの名俳優に乗り移れる世にも奇妙な穴の物語

2009年8月3日(月)12時58分

会社勤めを始めた人形使いのクレイグ(右)はある日、オフィスで謎の扉を見つける ©PolyGram Holdings, Inc. All rights reserved.

 人形使いのクレイグ(ジョン・キューザック)は生活のため、「7.5階」にある奇妙な会社で働きはじめる(天井は0.5階分の高さなので、従業員は中腰で歩くしかない)。ある日、クレイグはオフィスで謎の扉を見つける。扉の向こうはトンネルで、その先は......俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中だった。

 クレイグはマルコヴィッチに乗り移るスリルを味わい、15分後に外へ放り出される。商魂たくましい同僚のマキシンは、この扉で儲けようと考える。200ドルで15分間、あなたもマルコヴィッチに!

 チャーリー・カウフマンの想像力ほとばしる脚本を、スパイク・ジョーンズ監督は極上のシュールな喜劇に仕上げた。きてれつな脚本を派手に色づけせず、控えめに徹した演出が冴える。物語は奇怪なひねりを連発しながら疾走する。

 マキシンがマルコヴィッチを誘惑すると、彼女に恋するクレイグはマルコヴィッチに乗り移ろうと脳に飛び込む。だがクレイグの妻ロッテ(キャメロン・ディアス)も負けじと脳に潜入。さらに自分がもてあそばれていると気づいたマルコヴィッチもトンネルへ......。

 お世辞にもクールとはいえない形で自分を演じるマルコヴィッチだが、「さあ寝室へ」とおなじみの無表情な顔で流し目を送る彼は、この役のために生まれてきたようだ。なぜここまでオリジナルな映画ができたのか見当もつかないが、映画界が一時でも常軌を逸したことを神に感謝する。


『マルコヴィッチの穴』DVDオフィシャルサイト

[2000年9月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

国連調査委、ガザのジェノサイド認定 イスラエル指導

ビジネス

英雇用7カ月連続減、賃金伸び鈍化 失業率4.7%

ビジネス

25年全国基準地価は+1.5%、4年連続上昇 大都

ビジネス

豪年金基金、為替ヘッジ拡大を 海外投資増で=中銀副
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中