コラム

提携ブランドからも切られた、相変わらず学ばないYe(イェ)ことカニエ

2022年10月31日(月)12時34分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
カニエ・ウェスト

©2022 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<白人至上主義団体KKKが広めた運動「White Lives Matter(WLM)」のTシャツを着た炎上王者カニエ。自分が何をやっているのかも理解せず、教訓もいつも学ばない。この人につける薬はあるのか?>

Ye(イェ)に改名したラッパーのカニエ・ウェストと前大統領ドナルド・トランプはマブダチ。黒人の権利を訴えるBlack Lives Matter(BLM=黒人の命は大事だ)運動をもじって、風刺画では「〇〇Lives Matter」と、お互いが大事なものを書いたTシャツを見せ合いっこしている。

【関連写真】物議を醸したウェストの「ホワイト・ライブズ・マター」Tシャツ姿

トランプはMy T-shirt is better!(僕のTシャツのほうがいい!)と言っているが、本当はトランプシャツのほうが圧倒的にひどいことが書いてある。

だが、ファッションショーで実際にこのシャツを着て騒動になったのはカニエのほうだ。「なぜWhite(白人)Lives Matter(WLM)シャツを着た?」と聞かれて彼は「(白人の命が)大切だから」とごく当たり前のことしか答えていないのに批判された。

確かに大事だよね。白人の1人として僕もそれをぜひ忘れないでほしい。なんでそんなメッセージを発信するだけでたたかれるのか? 不思議に思う人も多いかもしれない。

その答えは現状を知ると見えてくる。アメリカで黒人は白人より2.5倍高い割合で警察官に殺されている。警察に殺された丸腰の人は黒人が白人の2倍多い。データを見れば、警察による黒人への暴力の度合いは白人より圧倒的に多いことが分かる。

忘れられている黒人の命の大切さを思い出させるのがBLM運動。一方、WLMは最初から大事にされている白人に焦点を引き戻すことで、BLMを打ち消そうとするもの。

「女性の社会進出を!」に対して「男性の社会進出を!」、「地球を救う!」に対して「火星を救おう!」、「弱者を守ろう!」に対して「若く元気な先進国のお金持ちを守ろう!」と主張するのと同じ構造だ。

男性も火星も前澤友作さんも大事だが、そこに注目すると本当の弱者救済を邪魔することになる。「前澤さんを守ろう!」Tシャツがあったら欲しいけど。

そもそもWLMは白人至上主義団体KKKが広めたもの。それでもカニエはWLMシャツを着る。奴隷制度の象徴である南北戦争時の南部連合軍の旗をあしらったジャケットも羽織る。トランプ支持の帽子もかぶる。もちろん毎回たたかれる。

ついに提携ブランドから契約を切られ、SNSからは追放された。なんでも身に着ける彼も教訓だけは身に付かないようだ。

ポイント

LYING, QANON, INSURRECTIONIST, MISOGYNIST, XENOPHOBE, WHITE SUPREMACIST LIVES MATTER
嘘つき、Qアノン(陰謀論者)、暴徒、女性差別者、外国人差別者、白人至上主義者の命は大事

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、10%の代替関税に署名 最高裁の違憲判

ワールド

トランプ氏、10%の代替関税に署名 最高裁の違憲判

ワールド

アングル:米相互関税に違憲判決、世界経済の先行き依

ワールド

アングル:米相互関税に違憲判決、世界経済の先行き依
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 4
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 5
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 6
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 7
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 10
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 6
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 7
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story