コラム

「胸元ばっかり見ないで!」 中絶議論から有権者の目をそらしたい米共和党

2022年10月04日(火)18時22分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
米共和党(風刺画)

©2022 ROGERS–ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<これまでさんざん「中絶禁止」を選挙でアピールしてきた共和党だが、今回の中間選挙では反発が強まりすぎてビビり始めている?>

Hey, my eyes are up here!(ねえ、私の目はこっちよ!)とは、女性が胸元を凝視する男性に注意するときの文言......らしい。言われたことないから分からないけど......。

今、アメリカの有権者の多くはBan Abortion(中絶の禁止)に注目しているが、共和党(風刺画のゾウ)はそれが中間選挙で自らに不利だと判断し、みんなの目線をそらそうとしている。

結構大胆な方向転換だ。約半世紀も前から、共和党は人工妊娠中絶という国論を二分する争点をうまく利用してきた。歴史的に民主党支持者が多かったカトリック教徒を自党に引き込み、福音派も熱狂させるためには便利な選挙対策だった。レーガン以降、共和党の大統領たちは中絶禁止の実現を目標に、中絶の権利は憲法で保障されているとした1973年の最高裁判決を覆すべく、保守派判事を指名し続けてきた。

一方、各州では共和党多数派の議会が中絶禁止法や中絶治療へのアクセスを制限する法規制を多く成立させている。2011〜19年に479もの規制が成立しており、共和党の政治家はそれを自慢してきた。つまり、「中絶禁止」が胸元であれば、共和党は、それを叶姉妹並みにアピールしてきたのだ。

ついには今年6月、保守派判事が73年判決を覆し、中絶を禁止する法律ができるようにした。Ban Abortionが掛け声ではなく、実体を伴うものになった。これがシャツをまくり上げたぐらいに目線を胸元に引き付ける効果を見せている。その結果、中間選挙が混沌状態に。通常なら中間選挙は野党(今回は共和党)に有利なはずだが、中絶の権利を守ろうと多くの女性が立ち上がり、新規の有権者登録の数も急増している。

これに共和党がビビりだし「いやいやInflation(インフレ)に注目してよ~!」と、与党民主党の弱点に視線をずらそうとしている。

しかし、共和党員の1人がやらかした。大物上院議員のリンゼー・グラムが9月、全米で妊娠15週以降の中絶を禁止する新しい連邦法を提案した! つまり、乳房に飾りを着けてぐるぐる回すぐらい胸元を目立たせたのだ。ストリップでおなじみのあのパフォーマンスはさすがに目が離せない......らしい。行ったことないから分からないけど......。

ポイント

中間選挙
4年に1度、米大統領選から2年後の11月に実施される上下両院議員の選挙。歴史的に政権与党が逆風にさらされる傾向にある。

有権者登録
米市民が選挙で投票するためには各州で有権者の資格を得る必要がある。登録手続きは州によって異なるが、マイノリティーに不利な制度への批判も起きている。

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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