コラム

「ダサい」「時代遅れ」は過去の話......「親方共産党」に群がる1億の党員たち

2025年07月18日(金)18時00分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
共産党

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<かつては「ダサい」「時代遅れ」と見られた中国共産党の党員が大人気で、ついに日本の人口に迫る1億人を超えた。しかし、中国にとって必ずしも喜ばしいことではない>

毎年7月1日は中国共産党の「誕生日」である。今年の7月1日、人民日報は「中国共産党の党員数が1億人を突破した」という祝賀記事を掲載した。党員数が日本の総人口に迫り、まさに地球最大の政党となった「喜大普奔(シータープーペン)」のニュースだ。「喜大普奔」は、「大いに喜んで、皆で走って知らせる」という意味のネット流行語である。

毎年7月1日前後になると、政府は有名俳優を使って「喜大普奔に党を愛する」プロパガンダを展開する。2021年にはジャッキー・チェンが起用され、シンポジウムで「共産党は本当に素晴らしい! 党員の皆さんが羨ましい。私も党員になりたい」と大真面目に語った。今年6月、彼の新作映画は香港で初日から2日間で6万9000香港ドル(約129万円)の興行収入しか上げられなかった。でも、4年前の「喜大普奔に党を愛する」映像は今も中国ネット上で拡散されている。


そして今年の7月、中国の全官製メディアは、92歳のベテラン俳優・游本昌(ヨウ・ペンチャン)が、21ページの申請書を書いて入党を果たしたことを競うようにして報じた。アメリカで音楽を学んだこの老俳優の孫娘は、祖父の入党を祝う革命歌を熱唱した。

今から十数年前、中国は起業ブームの絶頂期で、最も人気のあるのは共産党員でなく経営者だった。ある婚活番組で、参加者の男性が「僕は党員」と自己紹介すると、女性たちは一斉に「興味なし」とランプを消した。その頃、共産党員は「ダサい」「時代遅れ」の代名詞だった。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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