コラム

「ジプシー」「チマチョゴリ」 ここはセビリア、異文化が融合した街

2019年07月04日(木)11時30分

トロのこの「歩く」シリーズには、ユーモアもしばしば見られる。例えば3枚目のクリーニングされたばかりであろうスーツを運んでいる写真(上)は、人物が隠れ、スーツそのものが生き物のように見える。一方、はっきりと見えているキッチュなスニーカーのデザインは非常に今風で、伝統と歴史のある街との大きなコントラストを生み出しており効果的だ。

作品のバックグラウンド(背景)もまた、さまざまな要素をはらんでいる。すでに述べたようにランドマーク的な場面は含んでいないが、南欧のキリスト教文化、あるいは北アフリカのマグレブ地方(モロッコ、チュニジア、アルジェリア、モーリタニア、リビア)によく見られる濃いパステル系の色合いやアラベスク模様が、しばしば壁に描かれている。

ヒリヒリとして焼けつくような刺激性はないが、アンダルシア地方では日常的であろう心地よい暑さが伝わってくるような感じだ。これらの全ては、トロ自身が生まれた時からごく自然に吸収し感じ取ってきた光景、あるいは感覚なのである。

事実、トロはこう語った。

「私の写真に大きな影響を与えたのは、セビリアの街そのものだ。街は私の情緒面にも大きくつながっている。歩く人々の作品は、ある種、自分のセルフポートレート。彼らを通して、私は自分の生活を再び見つめ直すことができる」

今回紹介したInstagramフォトグラファー:
Jose Toro @josetoro.0

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プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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