- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- 日本とアメリカの現状否定票、その共通点と相違点
日本とアメリカの現状否定票、その共通点と相違点
日米の違いということでは、人口構成の違いという点もあります。アメリカの場合は、近年は少し出生率が下がっているものの、90年代から2010年代までは第3次ベービーブームとでも言うべき「毎年一歳刻みで300万人」という分厚い人口の層が存在しています。ミレニアルとか、X、Zと言われる世代は量的には上の世代に十分対抗できるのです。また、若者の雇用は不安定であるものの、DXやグローバリズムの浸透した実力社会を直視して、正しく戦えば少なくとも機会はある社会です。少なくとも世代によって富の偏在、機会の偏在があるというような世代間格差は顕著ではありません。
ですが、日本の場合は、若者と高齢者は全く異なる環境に生きています。偶然高度成長からバブルの時代に生きただけで、現代の若者とは比較にならない生涯賃金を得ている高齢層があり、しかも彼らは人口が巨大なので、若者の側は全く不利な戦いを強いられています。日本の場合は若い世代の現状不満のエネルギーは一旦火が付くと、深く静かに広がっていくかもしれません。
そもそも現状不満における「大義」に違いがあると思います。アメリカの場合は、国としてはグローバリズムに適応して全体が成長しています。付加価値の低い製造業は空洞化させて、その代わり本国は知的産業が中心となって巨大な付加価値を創造しています。そこには格差という副作用があり、またノスタルジックな昔のアメリカが失われたという感傷や、優秀なアジア系移民などへの反感もあります。ですが、全体の方向性は間違っていないので、不満というのは個別の問題なのです。トランプ派という特殊な運動に、そうした個別の不満が感情論を軸に結集しているだけです。
40年に渡って沈み続ける日本経済
ですが、日本の若者の現状不満は全く違うと思います。DXが進まず、学校で習った英語では世界で通用せず、経団連を中心とした多国籍企業はどんどん産業を空洞化させ、国内にはロクな産業は残っていません。そんな中で、大卒5割の国で観光立国などという、異常な政策が進んでいます。そのくせ、残り少ない国富は高齢世代が使い果たそうとしているわけです。
少なくとも、韓国や台湾並みにはグローバリズムに適応して、もっとDXが入って、高齢労働力でなく、若者がもっと成功できるような改革をしてほしい、若者の深層心理にそのような主張があるのなら、そこには正当性があります。外資の改革はスルーするが、国内資本が起業して既得権益と敵対する改革に進むと潰される、そんな中で円はどんどん下がり続けて、留学もできない。世代間ということでは、機会の均等も結果の均等もない。つまり、日本の若者が置かれた現状は、アメリカよりも遥かに劣悪であり、不満を抱くことへの正当性ということでは、明らかに正しさがあると思います。
勿論、一方的で少ない情報に踊らされているような面もあるのは事実です。何よりも、現状否定の衝動は強くても、それを代案へとまとめあげ、戦略戦術を練り上げて過去世代を叩き潰す逞しさも賢さも全く見えてきてはいません。頼りないと言えば全く頼りないのは事実です。ですが、アメリカの現状不満が知的高付加価値社会における「負け犬の遠吠え」であるとすれば、日本の若者の現状不満は、グローバリズムに適応できずに40年にわたって沈み続ける日本の経済社会への異議申立てであるとも言えそうです。仮にそうであるなら、そこには正当性はあり、将来への希望の萌芽は見て取れるように思います。
【関連記事】
アメリカのZ世代はなぜトランプ支持に流れたのか
米大統領選の現実を見よ――その傲慢さゆえ、民主党は敗北した

アマゾンに飛びます
2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
日本の新政権が向き合うべき、安全保障の「ねじれ」というアキレス腱 2025.09.17
「物価高対策と財政規律の間の最適解」──ポスト石破に求められる最重要課題 2025.09.10
アメリカのストーカー対策、日本との違いを考える 2025.09.03
「体験格差」という言葉に覚える強烈な違和感 2025.08.27
日本の核武装コストは、どのように計算すれば良いのか 2025.08.20
被爆80年の今、真剣に議論しなければならないこと 2025.08.06
戦後80年に必要な3つのメッセージを考える 2025.07.30
-
生成AI商材/大手外資系「インサイドセールス「SV候補」」/その他コンサルティング系
ブリッジインターナショナル株式会社
- 東京都
- 年収340万円~450万円
- 正社員
-
外資系投資銀行のオフィス受付 想定年収322万円~・未経験可・土日祝休み/東京/土日祝休み
グローブシップ・ソデクソ・コーポレートサービス株式会社
- 東京都
- 月給23万円~30万円
- 正社員
-
外資系企業の総務/メール室メイン/未経験歓迎 月23万円~港区 20代・30代活躍中/土日祝休み
グローブシップ・ソデクソ・コーポレートサービス株式会社
- 東京都
- 月給23万円~25万円
- 正社員
-
外資系企業のケータリングサービス 年休120日・土日祝休み・賞与あり/港区 20代・30代活躍中
グローブシップ・ソデクソ・コーポレートサービス株式会社
- 東京都
- 月給23万円~25万円
- 正社員