コラム

トランプ起訴騒動と、政治の時間感覚

2023年04月05日(水)15時30分

この容疑に関しては、それ以上でも以下でもない話ですが、政治的な事件としてはかなり重たい意味を持つという解説があります。

多くのジャーナリストが指摘しているのは、時間を直後とその後に分けた上での予想です。

まず、今回の起訴を受けて、短期的にはトランプの支持が上昇し、トランプ派も勢い付いていると言われています。起訴は、大陪審の決定とはいえ、リベラルなニューヨークの陪審による判断であれば、極めて政治的な「魔女狩り裁判」だとして、トランプ派は怒っています。

例えば、右派の「Qアノン系」と言われる、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和党、ジョージア14区)などは、早速ニューヨークの裁判所前に駆けつけて、反トランプ派との「もみ合い」に参加しています。自分の存在感を見せつけるためには、格好の「舞台」と考えての登場のようです。

トランプ派の盛り上がりは長続きしない

ただ、この「起訴への怒りによるトランプ派の盛り上がり」は、長続きはしないという見方もあります。トランプが、おとなしく出頭して指紋押捺に応じ、以降は淡々と裁判が進むようであれば、時間の経過とともに「トランプは過去の人」になっていくというのです。熱狂的なファンは支えるかもしれませんが、特に大口の献金などは細ってゆくことが考えられ、それは政治的な「死」を意味するからです。

例えば、この起訴騒動を通じて、2024年の大統領候補としては誰が相応しいか、という世論調査では、共和党候補としてフロリダ州知事のロン・デサンティスの数字が上昇しています。デサンティス知事は、トランプ起訴というニュースには怒りを見せて、ニューヨークの地方検事の捜査には協力しないと言明していますが、それはあくまでトランプ派の票が欲しいからそういった姿勢を見せているだけであり、実際は、デサンティス知事こそ、今回の起訴騒動による恩恵を一番受ける立場という見方もあるのです。

ニューヨークで裁判所に出頭、罪状認否では全34件の立件に対して「無罪」を主張したトランプは、フロリダに戻ると、自邸に支持者を集めて演説会を行いました。CNNなどは全国中継していましたが、最近のトランプの演説と同じく「一方的かつ一本調子」に、「今回の起訴は民主党の陰謀」だとか、FBIや司法省への憎悪を「まくし立てる」だけで、そこに切れ味はなく冗長なだけでした。

いずれにしても、今回の立件については、「トランプの政治的影響力を過去のもの」にする効果がどこまであるのか、というのが一番の注目点ではないかと思われます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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