コラム

就任1年のバイデン政権、直面する5つの難題

2022年01月19日(水)15時30分

4番目は、共和党側の攻勢です。例えば、選挙法制について共和党は全国の保守州で、有色人種や貧困層が「投票しにくく」なるように公選法を「いじって」います。バイデンは、これに対して全国レベルの法律を通してストップをかけようとしていますが難航しています。また、最高裁判事の多数を握っている保守派は民間企業におけるワクチン義務化を潰したり、この夏には妊娠中絶禁止の合憲化を狙っています。一方で、トランプ派の「汚点」「不祥事」である21年1月6日に発生した議会襲撃事件に対する議会調査、そしてFBIと検察による捜査・断罪は必ずしも上手く行っていません。

5番目としてはやはり「コロナ禍」が重くのしかかっています。ロックダウンを解除して経済を正常化したらデルタ株の大波に翻弄され、その次はオミクロン株という流れの中で、国民には「もうたくさん」という不満が渦巻いています。病欠者多発による航空便の大量欠航など社会の混乱も顕著です。特に教職員組合による一部大都市での対面授業拒否は、多くの子育て世代を混乱に陥れています。

バイデン大統領はワクチン接種(ブースターを含む)を呼び掛けていますが、保守派を中心とした強硬な忌避層は動きません。そんな中で、大統領は「無料検査キット」と「無料N95マスク」の配布を進めていますが、政治的にはコロナへの不満が大統領への不満に転化する、つまり日本の菅政権末期のような苦境に立たされています。

共和党が「バイデン弾劾」?

そんな中で、11月の中間選挙まで10カ月を切りました。このままの勢いで推移すると民主党は下院で過半数を失って、主要法案を通すことは絶望的となります。その結果として、バイデン政権の計画していたグリーン・ニューディールなどの政策は実現の見通しが立たなくなると考えられます。

それでは共和党にはどんなプランがあるのかというと、例えばトランプは共和党の穏健派現職を予備選で引きずり下ろして、トランプ派の新人を議会に数多く送り込もうとしています。その上で、共和党が下院の過半数を取ったら「バイデン弾劾」をやると息巻いています。バイデンに大統領としての違法行為があるわけではないのですが、彼らとしては「選挙結果を認めない」という姿勢の延長には「バイデン弾劾」は当然という感覚があるらしいのです。

就任1年にして苦境に立っているバイデン政権ですが、これからの政局へ向けての視界は民主党にとっても、共和党にとってもさらに不透明と言わざるを得ません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イエメン分離派が分裂、一部が解散発表 指導者側は否

ワールド

イランが国外と遮断状態に、最高指導者「トランプ代理

ビジネス

中国自動車販売、25年3.9%増 今年は横ばいと乗

ビジネス

今年もM&Aは好調見通し、リスクに備え規模追求=J
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    「不法移民からアメリカを守る」ICEが市民を射殺、証…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 10
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story